1/1 「じゃ、行ってくるよ◆」 「行ってらっしゃい」 ヒソカが少しずつ離れていく。 手を振っていた私は、ゆっくりとその手を下ろした。 見送るのはいつものこと。 でも、いつまで経っても慣れなくて、好きになれない。 ヒソカはこんなことを考えている間にも、どんどん私から、家から遠ざかる。 彼がまたうちに来るまで、私は一人。 ヒソカは空いている時間を、暇つぶしのために私の家で過ごしに来てくれる。 ヒソカの性格上、一緒に住むことが無理なのはわかっている。 だから、遊びに来てくれるだけで嬉しい。 でも、「来る」ということは「帰る」行為も含まれていて。 ヒソカはこれから幻影旅団の仕事。 わかっている。帰って欲しくないなんて、これは私のわがまま。 次はいつ来てくれるのかな、怪我しないかな、また笑ってくれるかな。 不安と心配と寂しさが、心の中でごちゃ混ぜになる。 私はいつも、ヒソカが見えなくなるまで見送りをする。 そのことに気付いているヒソカは、その間は走らずに歩いて行く。 その優しさが、私の心を掻き回す原因でもあるけれど。 そろそろ小さくなってきたヒソカを見て、いつもより早いけど今日はもういいかと思った。 体を家へと反転させたその時。 「今日はいつもより早いね◆」 「ヒソカ…」 近くでした声に振り向くと、ヒソカが笑って私を見ていた。 「どう…したの?忘れ物?」 一瞬で戻ってきたことにびっくりして、いつも手ぶらで来ているヒソカにそんなことを聞いてしまう。 「うん、忘れ物◆」 「え、でもいつも手ぶら…きゃっ!」 ヒソカが手招きするみたいにくいっと指を曲げただけで、私は何かに引っ張られるように彼の胸に飛び込んだ。 何が起きたんだか理解できないままにヒソカの顔を見ようとすれば、唇を塞がれた。 「ん…」 開いていた口内に易々と侵入され、私の舌を弄ぶ。 唇が離れた時には、ヒソカの胸の中で私は荒い息をついていた。 ヒソカは呼吸ひとつ乱しておらず、私の様子が可愛いと言うようにくくくと笑っている。 「どういう、つもり?」 荒い息の中、私は途切れ途切れに、にやにやと笑っているヒソカを見上げて聞いた。 もしかして、体だけの関係を結ぼうとでも思っているのだろうか。 それとも、飽きたからもう来ないとか。 もしそうだったらどうしよう。 しかし、ヒソカの口から出た言葉は全く違うものだった。 「ナマエが不安がってるように見えたから ![]() 「え…?」 「だから、印をつけてあげようと思ってね ![]() ヒソカは私の首筋に顔を近付け、軽く噛みついた。 「ッ!」 そのまま鎖骨に行き、服を捲られお腹も噛みつかれた。 「やっ…」 思わず出た声に、ヒソカは堪らないというようににやりと笑った。 「ちゃんとつけたからね◆ ボクは印のあるところに戻るよ ![]() そうしてヒソカは、スタスタと歩いて行ってしまった。 私は半ば呆然としながらそれを見送り、ヒソカのつけた印を見て顔を赤くした。 ヒソカの最後に言った言葉が「来る」じゃなくて「戻る」だと気付いたのは数分後。 伸縮自在の愛 (離れていても、愛は変わらず) (必ず、君の元へ ![]() ---------------------- 110113 主人公は一般人設定。だから念で引っ張られた時わからなかったり。 つかいつバンジーガムつけたんだ← ← 戻 → |