1/1 夜ご飯の材料を買って家に帰る。 自炊って、慣れると結構楽しいんだよね。 今日は私の好きなビーフシチュー。 ふふ、と笑顔で自宅に着くと。 「何を笑ってるんだ?」 家の前には、ストーカーがいました。 「遅かったな」 「何でアンタがここにいるの、クロロ」 家の前にいた人物は、クロロ。 スーツを着て、爽やか好青年の彼は、見惚れる様な綺麗な笑顔を浮かべている。 顔は嫌そうに眉根を寄せているのに、心臓が高鳴ってる自分がつくづく嫌だ。 「ここはアンタの家じゃないわ。さっさと帰りなさい」 「そんなことを言うな。俺にも飯を作ってくれないか。腹がぺこぺこなんだ」 クロロは私のきつい言葉にも動じずに、更に言ってくる。 私はそれを無視して、ドアの前にいるクロロも無視して家に入ろうとした。 そうしたら、腕を掴まれた。 「何よ」 「お願いだ。頼む」 クロロは私の腕を掴んだまま、じっと見てくる。 その目は暗くて、でもどこか見放さないでと寂しげで。 寒さに震えている子犬を連想させるその表情に、うっとくる。 演技なのはわかってるが、そういう表情をされると私は弱い。 それが顔に出たのか、さらにこちらを見て畳みかけてくるクロロ。 「…あ、アンタその年で自炊もしないわけ。ほんっとどうしようもない男ね」 「ナマエの作る飯が好きだからな、作る気が起きないんだ」 無理矢理毒づいた言葉は、返り討ちにされた。 今度は一転、にこっと笑うクロロ。 だ、騙されないぞ。 私は他の女の様に、ころりとは、いか、ない…。 「ご馳走様。今日もおいしかったよ」 結局、家に入れてしまった。 また今日も、家に入れてしまった。 表には出さないように、内心でがっくりとうなだれる。 これで何回目かは、もう数えない。 「お粗末様。そりゃあ良かったわね」 でも、クロロの笑顔を見ると、そんなことどうでもいいとどこかで思ってしまう。 おいしいって言って笑ってくれることを、すごく嬉しく感じている自分がいる。 ああ、結局私はこうして利用されるだけの女に成り下がるんだわ。 「ビーフシチュー、俺好きなんだ。だから今日は特においしかった」 笑顔のまま、クロロは言う。 あー……。 私は頬杖をついたまま、目が離せなかった。 …今日は、自棄酒でもしよう。 そうだ、それがいい。こいつが帰ったら酒を飲もう。 「何だ?酒を飲むのか?ならば付き合うが」 「!な、何でわかるのよ!声に出してないのに」 「顔を見れば、わかる。ナマエはわかりやすいからな」 そう言って少し笑むクロロは楽しそうで。 心臓が高鳴った。 一緒にご飯 (明日も一緒に) 「ああ、ナマエ」 「何よ?」 「俺が酒を飲むのまで付き合うのは、好きな女だけだ」 「…!」 ---------------------- 110104 初HUNTER×HUNTERです! 先にイルミをあげる予定でしたが、難航したのでクロロを← ← 戻 → |