1/1 「こーら名字。 なんでネクタイそんなにゆるめてるの。校則違反でしょーが」 やる気のない声で私に注意する人は、教師・はたけカカシ。 「だってカッチリ締めるのなんてダサいじゃん!」 「ダサいダサくないの問題じゃあないの。 それに第三ボタンまで開けて。全く、お前って奴は…」 確かにはたけ先生の言う通り、ネクタイをゆるめることは校則違反だし、Yシャツのボタンを開けていいのは第一までと決まっている。 だけどそんなにカチカチしてるのなんて嫌だ。 もっと自由に私を表現したいの! 「はいはい後で直すから。 じゃあねはたけ先生〜」 軽やかに言った言葉とは対照的に、走って逃亡を図る。 はたけ先生は熱血教師でもないし、きっと追いかけて来るなんてことは…あれ!? 「待て名字〜!」 追いかけてきてた。 しかも、全力疾走で。 「いやああぁあ〜!!」 何で来んの!? 先生そんなキャラじゃないはずなのに!! 「綱手校長に言われたんだよ。 “もっと生徒に厳しく指導しないと、給料下げてその分を私が貰う”って…」 私の心の叫びを聞き取ったかのような先生の情けない声。 つかそれって犯罪じゃ…? 「綱手校長には弱味握られてるからね〜ハハ…」 先生、御愁傷様です… そんな会話らしきものをしていたら、はたけ先生が私の腕をつかんだ。 先生足速いよ〜… 「はい捕まえた」 「ち、ちゃんと直すから離してよ」 「お前言葉使いもなってないな。先生は年上だぞ? みっちり説教してやる」 はたけ先生は私の腕をつかんだまま、空き教室の中に入った。 「もうわかったってば! はやく腕離してよ」 私ははたけ先生に抗議するけど、先生は全く聞いていないみたいで、 「まずはネクタイか」 私のネクタイをシュルッととった。 「何してんの!?」 「うるさいよお前。少し黙って」 私は次の言葉に硬直した。 「お楽しみは、これからだーよ?」 はたけ先生の顔が、ニヤリと妖しく笑った。 「ちょ、先生!?」 「ん?説教すんだから無駄な抵抗されたら困るじゃない」 はたけ先生は私の背後に立つと、自分のネクタイをとって私の両手首を後ろ手に縛った。 私のネクタイは先生のポケットの中に入っている。 「やめてよ!これからちゃんとするからっ…」 「そんなのどうせ一時の言葉でしょ? 名字が改心するように、俺頑張るからさ」 はたけ先生はそう言うと、私の首筋を指でなぞった。 「ッ…」 「さ、まずはボタンだーね」 先生は私の背後に立ったまま、手を前に出してきた。 「ここから見ると、黒いシャツの中からブラジャーが見えるね。色はピンク、かな?」 私はYシャツのボタンをわざと下まで開けて、中に着たキャミソールを見せるのが好きだった。 それがこんな仇になるなんて… 視界が霞んできた。 涙が少し溜まっているのがわかる。 「せんせ、もう…」 「やめたりなんかしないよ? それより名字、結構胸大きいんだね…」 はたけ先生は掠れた声で呟く。 先生の指がボタンにかかる。 「嫌っ、はたけ先生やだぁあ、開けないで!」 だけど私の予想とは違い、先生は第三ボタンを閉めた。 「ふう、先生の理性に感謝するんだよ…?」 耳元から、マスク越しの先生の声が響く。 その声にビクッと反応する。 危なかった… でも、よかったよぉ。 私は心底安堵した。 「俺のことは、カカシでいいよ。俺もこれから名前って呼ぶし」 「カカシ…先生」 「まあ、それでいっか」 第二ボタンも閉めた先生。 「第一は首がキツいと思うし、やめようか」 先生はそう言って、ポケットから私のネクタイを取り出した。 「名前はネクタイもちゃんと締められないから、先生がやってあげるね」 「で、できるもん!」 「できてたら先生だってやんないよ? 日頃があんな子に言われてもねぇ…」 「う…」 やっと手首の解いてもらえると思ったのに! 「さ、やろうか」 先生はしゅるりとネクタイを巻いていく。 「あ、間違えちゃった」 でもそう言っては何度も何度もやり直す。 私は首に当たるネクタイがくすぐったくて、気づいたら声を上げていた。 「んっ…カカシ先生ぇ、くすぐったいよぉ」 体をひねって避けるもどうにもくすぐったい。 「ごめーんね?」 「私、くすぐったいの弱いんだから」 「そうなんだ?でもね、名前」 “そんな声聞いちゃったら、俺、我慢できないよ?” 耳元で聞いた声に我に帰る私。 なっ…私、なんて声を!! 先生はマスク越しに湿った吐息で私の耳を犯す。 「ッ…先生ぇ、やめ」 「名前の体、さっきからいい香りするんだよね… もしかして誘ってる?」 「そ、んなわけないで、くすぐったい!! それに耳元で喋るのやめてよっ!」 私は体を動かして抵抗する。 そうだよ足は自由だったじゃん! 「名前は自分で自分を追い込めるのが好きだねぇ。 じゃあこんなことしちゃうよ?」 「!!」 カカシ先生は私のお腹あたりに手をまわし、片手で抱きしめてきた。 「これでもう動けないね」 カカシ先生は嬉しそうに笑う。 「やだぁ離して!」 「抵抗しなければすぐ終わるから。ね?」 ネクタイも今度こそ正しく締めて、もう終わりと思ったとき。 「最後に言葉使いを直さなきゃーね」 「え、まだあるの…」 「それほど名前には問題が山積みってことだーよ?」 いや、そういう意味じゃないんだけど… そろそろカカシ先生のタチの悪いセクハラをやめてもらわないと、私の体も本気になる、から… 「ねぇ名前、さっきからもじもじ体動かしてどうしたの?」 「も、もじもじなんかしてないもん…」 「そう?俺のアレも擦れてちょっと危ないんだけど」 カカシ先生が私を後ろから抱きしめてるから、さっきよりかなり密着してて。 カカシ先生の心音、はやいな… 先生も興奮、してるのかな…? つか!まじで何かちょっと大きくなったモノが当たってるんだけど! これ以上はだめっ… 「ね?これからはちゃんと反省して、先生に対して敬語使うって約束したら、名前が今一番してほしいことしてあげるよ」 今一番、してほしいこと…? それは、カカシ先生と… 私の口は勝手に動いていた。 「誓うっ、約束するから!!」 「本当に?できる?」 「う…はい。できます」 「いい子だーね」 カカシ先生はそう言うと、目をつむってと言ってきた。 ドキドキする。 やっぱりまずはキスからだよね… しゅる… 「はい。いいよ」 「え?手…」 「うん。解いたよ」 「ええー!?」 カカシ先生は私の手を巻いてたネクタイをとっただけだった。 「なぁにその声。名前、さっきからとってってうるさかったじゃないの。 それとも他にあったの?」 「あるに決まっ…いや、ない、です」 カカシ先生とイケナイことしたかっただなんて言えない!! 「じゃあもう終わりですよね! 私帰りますっ」 「はいはい。いいよ」 私は勢いよくドアを開けてダッシュで走り出した。 ドキドキのお仕置き (先生のバカぁあ〜!!) (絶対日頃の行いのせいじゃない!!) ◆おまけ 「…まあ、言葉の説教なんてどうせ効かないだろうから、ずるいとは思いつつもああしたわけだけど…」 はたけカカシははぁとため息を吐いた。 「まさか年下、しかも生徒相手にこーんなにドキドキしちゃうなんてねぇ、俺も困ったもんだ」 ← 戻 → |