NARUTO短編 | ナノ


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「お待ちしてました。お帰りなさい」


イルカ先生の優しい声が耳にこだまする。
あー、癒される…。
任務の後の疲れた体にじんわりと浸透していく。


「報告書、確かに受け取りました。今日もお疲れ様でした」

「イルカ先生も、お仕事ご苦労様です」


微笑みかけてくれるイルカ先生に、私も笑う。
イルカ先生は、本当に癒し系だよね。


「名前さんは、この後何か予定とかあるんですか?彼氏とデートとか」

「予定ですか?ないですよ」


照れたように聞いてくるイルカ先生に、笑いながら答える。
いきなり何を聞くんだろう。


「私、彼氏いないですし。でも、いきなり何でですか?」

「や、今日はクリスマスですから。名前さんは恋人と過ごされるのかなと思って」

「…は?」


クリスマス?
今日が?


「え、あの…今日って12月25日ですか?」

「はい、そうですが」

「…………」

「………」


流れる沈黙。
最近任務が立て続けに入ってたから、今日が何日かなんていちいち確認してなかった。
まさか今日がクリスマスだったなんて…
じゃあ、もうイブは過ぎてしまったわけだ。


「……私たち忍に、クリスマスなんて関係ないですよね!」

「そ、そうですよね!」


思いっきり苦笑いで言うと、イルカ先生も苦笑いをしながら頷いてくれた。


「でも、あの!」

「何ですか?」


声を張り上げたイルカ先生。顔が赤い。


「も、もしよろしければこの後…っ!」


しかし、突然イルカ先生の声が止まった。顔が真っ青だ。


「どうかなさいました?顔色悪いですよ」

「い、いえ何でもないです。気にしないで下さい。
ほ、報告書はお預かりしましたので!お疲れ様でした!」


捲し立てるように言ったイルカ先生は「次の方お待たせしました」と、私の後ろに並んでた忍から報告書を受け取った。


「じゃあ、失礼しますね」


そう言って私は受付から出た。
それにしても、突然どうしたのだろう?言葉の続きも気になるし。
うーんと歩きながら考えていたら、お腹がくぅと鳴った。
そういえば、朝以来何も食べてなかった。
一楽に行こうか。恋人のいない私にはちょうどいい。
その時、後ろから声がした。


「や」

「カカシ?」


振り返るとカカシが片手を挙げていた。


「どうしたの?任務帰り?」

「いや。名前を待ってた」

「私?」


思わずきょとんとしてしまう。
何か用でもあるのだろうか。


「あ、もしかしてこの前イチャパラ踏んじゃったこと怒ってる?ごめんね。でも踏む前に気付いたから、本当は踏んでないんだよ」

「いや、そうじゃない。そんなことじゃないんだーよ」


カカシは軽く溜め息をついた。
何だか落ち込んでいるようにも見える。


「今日、クリスマスでしょ?」

「そうだね」

「俺は、名前をご飯に誘おうと思ってるの。あ、もちろん奢るからね」

「本当?ちょうどお腹減ってたんだ。ありがとう!」


カカシが奢ってくれるなんて、本当に今日は変なことだらけだな。
イルカ先生も変だったし。


「カカシ、今日は珍しいね」


小さく笑ったら、カカシはじとりと見てきた。


「…ねえ、意味わかってる?」

「意味?」


意味って何だろう。
首を傾げる私に、カカシはさっきよりも盛大な溜め息をついた。


「……いや、何でもなーいよ。ご飯、どこ行く?」

「一楽!彼氏いないからちょうどいいし」

「りょ、りょーかい……」


何でそんな泣きそうな顔してるんだろう?
隣にいるカカシを見てそう思ったけど、一楽についたらすぐ食べたいから今から何を頼むか決めておこうと思って、そんなことはとりあえず頭の隅に置いておくことにした。




(何食べようかな)
(遠慮はしないよ?)





◆おまけ
「…はぁ」

「どうしたのカカシ?ラーメン伸びるよ」

「……」


せっかくイルカ先生だって名前にバレないように牽制したのに。

……俺の好きな彼女は、鈍感でした。




(俺、男して見られてないのかな…)



101225


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