1/1 「イタチ…」 私が呼んでもイタチは振り向かなくて。 それは、イタチがもう行くことを意味していた。 「俺は行かなければならない。 もう会うことはないだろう…」 「イタチ…」 彼の後ろ姿を目に焼き付けるように見る。 “次で最後だ” そう言われた時、私は初めて自分の気持ちに気付いた。 気付くのに遅すぎたこの気持ちを、私はイタチに伝えられなかった。 だって、イタチはそれを望んでないから。 目の前にいるはずなのに、イタチの後ろ姿は遠い。 「本当に…行くんだね」 「ああ。…俺は、お前とは生きられない。 最初にそう言ったはずだ」 ざあっと風が吹く。 私だってあなたと一緒に生きられるなんて思ってなかった。 浅い関係で終わると思ってた。 いつかイタチは、うちはサスケの前に現れるから。 私の所にずっといられないことを知っていたから。 そんな人を好きになるほど、私は純情じゃない。 なのに、気付いたらいつの間にかのめり込んでいて。 イタチが来ない日は、ため息の嵐で。 イタチが笑った日は、彼をもっと好きになる日になった。 「イタチ……」 “行かないで” 一番言いたいことを言えなくて、思わず暁のマントを掴んだ。 「…名前」 イタチが鋭い声を発する。 それでも、私の名前を呼んでくれたことが嬉しくて。 いつまでもそのままでいる私に、イタチは私の方を向いて、慣れた手つきで私を軽く抱きしめた。 いつもしてくれたみたいに、名前を呼んでキスはしないで。 それが、彼の答えだった。 最初からわかっていたのに (それでも私はあなたが好きです) 「…名前と過ごした日々、楽しかった」 その言葉に顔をあげたら、イタチの笑顔があった。 「…イタ、」 私が名前を呼ぼうとしたら、イタチの姿は既になくて。 「イタチ…」 暁のマントを掴んでいた手は、むなしく空を握っていた。 残ったのは微かなぬくもりと、彼をもっと好きになった、痛いくらいのこの気持ち。 私は今日も、あなただけを ← 戻 → |