1/1 ナルト誕生日記念 今日は木ノ葉学園の学園祭の日。 教師・はたけカカシは自分の教科担当の準備室でゆっくりと愛読書を読んでいた。 ああ、これぞ至福の時…! マスクの下で顔をにやけさせながら幸せを噛み締めていたら。 招かれざる客人が来た。 カカシは愛読書から目を離し、若干眉をつり上げて言う。 「なーんでお前らと一緒にお化け屋敷に入らなきゃいけないのよ」 「あそこのお化け屋敷めちゃ怖いって評判なんだってばよ。だからカカシ先生と一緒に入れば大丈夫だと思って」 「他にも人はいるだろうが。あいにく俺は今忙しいの」 「ってー!本読んでるだけじゃねえか!」 招かれざる客人―うずまきナルトはカカシに指をびしっと指しながらわめく。 「もう、うるさくて本に集中できないだろうが。はやく出てけ」 カカシはナルトを手でシッシと追い払う。 「カカシ先生ーお願いだってばよ…一緒にお化け屋敷入ってくれってばよ…」 カカシの態度に落ち込みながらも、まだ頼むナルトの必死さに、カカシはやれやれと愛読書を閉じた。 可愛い教え子にここまで言われて、断るだなんてできない。 「…しょうがないな。一回だけだぞ」 「やったー!」 実を言うと、ナルトはカカシの驚くところを見たいがために頼みに来たのだったが、その事にカカシは気づかなかった。 「サクラちゃんとサスケもいるってばよ」 「あの二人がいるなら大丈夫じゃないか?」 「わ、わかんねえってばよ!?カカシ先生がいた方が俺も安心だって!」 苦し紛れに言った言い訳だったが、そのナルトの発言は見事的中するのだった。 ナルトはわーわー悲鳴を上げて、サクラは恐いよサスケくぅんと言いながらちゃっかりサスケの腕に抱きつく。 そんなサスケはわずかに顔がひきつっている。 どうやらサクラのせいじゃないようだ。 もしかして怖いのだろうか? そんな三人を眺めながら、教師、はたけカカシはのんびりと後ろを歩いていた。 ナルトが散々怖がってくれるおかげで大体の仕掛けを把握しながら進む。 あいつあんなに怖がってるが…。 そんなに怖いか? 全く、びびりだーね。 「ぅっうわあぁあ!!」 ナルトの叫び声にサスケが盛大にびくつく。 そんなサスケを見てサクラはさらに腕を絡ませる。 やっぱりサクラが一番しっかりしてるな…色んな意味で。 「こらナルト。少しは落ち着きなさいって」 「だっだってよぉ…めちゃめちゃ怖えぇってばよ!!」 カカシはナルトに注意するが、こうやって会話している間にもナルトは大声をあげながらカカシの腕をつかむ。 「こらナルト、やめろ」 「お化け屋敷怖いってばよー!!」 女の子に腕をつかまれてるならまだしも、うるさい男子生徒につかまれている教師、はたけカカシ。 その複雑な心境をぶつくさぼやくも、ナルトは怖がって聞いていない。 サスケは元から二人の会話など聞いてないし、サクラは完全に幸せモードに入っている。 哀れなカカシであった。 「ちょ、ナルト!お前なんでそんなに怖がってるのに一番先に進むのよ」 「だって先進めば出口がはやいと思っ…うわぁあああ!!」 ナルトの言い分を聞いて、カカシはため息をつく。 なーんでそんなに短絡的なのかねぇ… 「先生は怖くないのかよ?」 「んー、ま、誰かさんが散々怖がってくれるお陰でね」 「う、うるさいってばよ!」 ナルトと大声で会話していると出口が見えてきた。 「あ、ほら、そろそろ出口だ」 「やった!早く出ようっと!」 ナルトは浮かれながら走って行く、が。 「ぎぃやぁあああ!!」 出口に仕掛けられていたおもちゃの生首が上から落ちてきて、腰を抜かしてしまった…。 「全く、何やってんだか…」 カカシの言葉は誰にも聞かれずに、空中へと消えていった。 お化け屋敷 (ま、たまにはこういうのもありかな) ← 戻 → |