だから、少し | ナノ


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暗部に入って十年。
私は感情と言うものを失くした。
普通の忍ならまだしも、そんなものは暗部の忍にとっては邪魔なもの。
任務中も必要最低限に会話を絞り、危機になれば仲間の特性を考えた上で連携を図る。
死んだって構わないが、仲間がいなければ任務成功率はぐっと下がる。
全ては任務のため。
連携を図っても、そこに感情などはない。

それに私は人と交わることも嫌いだから、友人と呼べる存在もいない。
口寄せの契約をしている忍猫と会話する程度だ。


私は、自分が死ぬまでずっとこういう風に生きていくんだと思っていた。
里のために命を懸け、里のために死ぬ。
感情のない“影”として生きていくと思っていた。




なのに、突然。


「名前、暗部を辞めて上忍に戻れ」


開口一番、火影様は両手を顔の前に組んで、いつもと何一つ変わらぬ口調で言い放った。


「……いきなり何をおっしゃるんですか」


心臓がどくりと鳴ったのは―……びっくり、したのだろうか。
久しぶり過ぎて、自分でもその正体がよくわからない。
でも、私の中にまだこんなものが残ってるなんて…。

そう考えていると、火影様が続けた。


「お前は暗部歴十年だ。
今、暗部の者達には少しずつだがただの忍に戻ってもらっている。
何故こんなことをするかわかるか?」

「いいえ」

「そうか…。
私は、暗部をただの殺人集団にはしたくない。
だが、暗部は普通の忍よりも感情を殺さなきゃならないだろう?
そのせいで感情を失くした奴もいる。
名前、お前の様にな。
だから一旦暗部を辞めて、普通の忍になって感情を取り戻し易くしているんだ。
暗部にいるよりはマシだろうからな。
まあ、これは強制ではないが。どうする?」


火影様のおっしゃることはわかるような気がする。
でも、感情を取り戻したとしても、またそれを殺さなきゃならないのに。


火影様は私に目を合わせて、無言で返事を催促している。
私は口を開いた。


「私は、今のままでいいです。
感情など取り戻したところで、所詮は無用のもの」


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