だから、少し | ナノ


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「俺も昔暗部にいたけど、任務一緒になったことないよね?」

「はい。私は単独任務が多かったので」

「じゃ誰かと組んだのも、俺が久しぶりとか?」

「はい」


任務のため、木々の間を走り抜けながら会話をしているはたけ先輩と私。
はたけ先輩とは任務を組んだことがないので、すごいということは噂で聞いても面識はなかった。


「まさかはたけ先輩と組むとは思いませんでした」

「俺のことはカカシでいいよ」

「…はたけ先輩とお呼びすることに何か不都合があるとは思えないのですが」

「名前で呼ぶ方が親しみを感じるからね。感情を取り戻すにもまずは小さな一歩からだよ。
だから名前ちゃんは特別に先輩もいらないんだけど。…ま、最初だからね」


カカシ…先輩。
誰かを名前で呼ぶなんて初めてかもしれない。
人のことを名前で呼ぶ必要なんてなかったから。
何だか、心臓の鼓動が速くなった気がする。
いや、そんなことはない。
私に感情なんて、ないのだから。


「今回の任務は何をやるんですか?」

「川の国に巻物を届ける、簡単な任務だよ」

「それは下忍でもできる内容ですね」


そんな簡単な任務を上忍二人にさせて、ただの時間の無駄なのではないだろうか。
言いたいことがわかったのか、カカシ先輩は口を開いた。


「そうだーね。五代目は、殺しの任務はさせたくないって仰ってた。感情を取り戻しやすくするために、こういう簡単な任務を入れて下さるってね」

「殺しをしないだけで、感情が戻るとも思えませんが」

「確かにね。でもそれは名前ちゃん次第だーよ」


カカシ先輩は笑った。




川の国へは思った以上に早く着いた。


「名前ちゃんは足が速いね。予定より早く着いたよ。さすが暗部」

「有難う御座います」

「じゃ、渡しに行こうか」

「はい」


巻物を無事渡し終え、帰ることになった。


「時間もかなり余ったし、ゆっくり帰ろうか」

「はい」


川の国の景色を眺めつつ、ゆっくりと走っていく。
木ノ葉とはまた違う景色。
景色を見たりなんてこと、今までなかったかもしれない。
見たところで私は、何も感じないけど。


「綺麗だーね」


綺麗、なのか。この川と木々だけの風景が。


「…そうですね」


どうしてそう思うのか理解が出来ず、小さく相槌を打った。






「早かったな」

「名前の足が速かったもので」

「暗部だからな」


木ノ葉の里に着いて、五代目に報告書を出す。


「名前は?」

「任務が終わったので解散しました」


「そうか」


それに目を通しながら、五代目は口を開いた。


「何か変化はあったか」

「特に変わりはありませんでした」

「初めてだったからな。仕方ない」


五代目はふう、とため息をついた。


「他の暗部の奴は任務中だけ感情を殺している奴が多いからすぐに戻ったが…あいつは一番難しいかもしれないな」

「…そうですね」

「だが難しいと言っても元々人間に備わっているもの。必ず取り戻すことはできる。引き続き頼んだぞ」

「は」


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