「ときめき不足なので稼働しません」

 昼休み。昼食を取ったまま話し込んでいた席で突然彩子が言い放った言葉に、俺は目を丸くする。

「…は?」
「ちょっと! 聞いた一之瀬この反応!」
「まあ風丸だしね」

 さして驚いた様子もなく彩子の対応をする一之瀬に、更に目を丸くする。なんだこいつら、なんか仕組んでるのか。

「多分そんな遠回しに言ってもダメだと思うんだけど」

 一之瀬の言葉を受け唸る彩子。いや、俺、おいてけぼりなんだけど。どうせ気付いてるんだろうから、ちょっとくらいなんか説明してほしい。

「で、なんの遊びな訳?」
「言うに事欠いてそれ?!」
「えええ…」

 カッと目を見開く彩子。怖い。助けてくれと一之瀬に視線を向けても、にっこり裏のありそうな笑顔を返されるだけだ。なんなんだ本当。

「まあこの反応が良くも悪くも風丸だよね」
「出来るなら何が悪いのか出来るだけ具体的に教えてほしいんだが」
「やだよつまんないだろ」

 あっさり言い放った一之瀬を、このときばかりは本気で殴り飛ばそうと思った。しないけど。

「ほら、一ノ瀬だってわかってるだろ?」
「そうだけどさー…! 」
「これ以上がほしいならはっきり言わないとわかんないって」
「んんん…!」

 おいてけぼりどころか俺を話に入れる気がないと見た。時計を見ると、もうあと5分程で午後の授業の始業時間になろうとしていた。

「あっ、ちょっとなんで片付けてるの!」
「もうすぐ授業が始まるから」
「あ、ほんとだ」

 時間に気付いた一之瀬もその場を片付け始める。彩子も腑に落ちない表情をしながらも、それに倣う。

「…もう」
 小さく漏らした溜息が、聞こえた。しょうがないな、なんて思いながら、体は反射的に動いていた。

「何ふてくされてんだ」

 ぽんと頭の上に手をおいてやると、彩子は驚いたような表情をしたが、気にせず続ける。

「なんかよくわかんないけど、俺が側にいるだけじゃダメなのか?」

 刹那、彩子の顔がみるみる赤くなる。俺の手を払って、ばかっ! と叫んだかと思うと、走って教室を出ていってしまった。唖然とする俺の後ろで、一之瀬は爆笑している。

「うん、ほんと風丸らしい」

 そんな笑いながら言われても。少なくとも、褒められている気は全くしない。




【全部通常運転】



☆ナチュラルにかっこいいこと言うイケメンな風丸が書きたかったのに撃沈。
 First word by 確かに恋だった

 20111029 ayako,i

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