溢れた涙が煌めいた。ああ、綺麗だ。他人事のように思って、彼女の目元に手をやる。

「泣くなよ」
「だ、って」

 拓人は辛くないの、悔しくないの。はらはらと、彩子の瞳から粒が落ちる。綺麗なのに勿体ない。オレはやっぱり、どこか冷静にそんな事を思いながら、その問いに答える。

「悔しいさ」

 荒雲戦での怪我はやはり決勝戦までには完治しないようで、オレは病院での静養を余儀なくされた。本当は、体に鞭打って、這いずってでも試合に出たい。でもそれがチームのためにならない事くらいわかっている。
 ここまで来たんだから、オレもみんなと決勝に出たかった。本音は、そうだった。

「でも、みんなならきっと、オレが居なくても革命を成し遂げてくれる。そう思うんだ」
「…なんで」

 どうしてそんなに大人な意見なの。また、流れ落ちた星粒。すくい取って保存しておく事は出来ないだろうか。ショーケースにでも入れて。

「綺麗だ」

 彩子がオレの代わりに泣くから、悔しいけど辛くは無い。
 真っ直ぐに目を見て告げると、徐々に言葉の意味を理解したらしい彩子が真っ赤になって下を向いた。ばか、小さく向けられた言葉に苦笑。

「オレは、キャプテンだから」

 試合には出る事が出来なくても、成すべき事がある。
 少し前の、弱くてたびたび涙していた頃の自分が脳裏を過ぎた。そう言えば、あの頃は彩子との立場が逆だったかもしれない。以前は、フィフスセクターと戦おうと決める前は、挫けそうになるオレを、彼女は叱咤してくれた。

「彩子」

 ありがとう。視線が交わる。驚いた表情を浮かべる彼女に、ありのままの気持ちを述べる。

「辛い時、彩子が側にいてくれたからオレは今ここにいる」

 キャプテンとして、試合に出る事は出来なくても、チームを思い、目を背けずに決勝の行方を見届けようと思えるんだ。だから。

「――ありがとう」

 目元に、キスをおとす。ひぇっ、妙な声をあげて、彩子は茹で蛸になった。
 わかっててやってるでしょ、下を向いて、更に顔を片手で隠し、もう一方をオレに向けてくる。すこしおかしくなって吹き出したら、猛然と抗議された。

 嗚呼、どうか。
 もしもまた、オレに何かあったときは、その流れ星をオレにください。
 そうすればその星に願いをかけて、オレは現実と向き合えるから。



【星屑ノクターン】




ノヴェレッテ様へ提出。
 ようするに拓人が自由に自分の気持ちを語ってヒロインが赤面すればいいんだろう!
 ↑ノクターンの意味を度々忘れるので、メモ書きとして残しておいた一言。残念ながら大いに役にたった←
 設定はアニメ40話のとき、のつもり←

 20120209 ayako.i

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