「風邪、ひくよ」

 真っ白な世界にで佇んでいると、後ろから声をかけられる。振り向くとそこには、鮮やかな色が咲いていた。

「彩子」
「また大した防寒もしないで」

 呆れたような表情を浮かべて、僕のてを引き傘の中に導く。

「もう、こんなに冷たくなって」
「……ありがとう」

 傘の中に入れたことに対してではないという事を表情で察したらしい。先を促すように、彼女は首をかしげた。

「見つけて、くれたから」
「ああ。なんかここに居る気がして」

 邪魔してごめん、彩子は謝ったけど、僕は逆に嬉しかった。幼馴染みの彼女は、かつて僕が家族を失った事故以来たった一度、事故のあと花を手向けたときにしかここを訪れていなかったから。
 また、ここに来てくれた。その事実が嬉しかった。

「なんか変わったね、士郎」
「そうかな?」
「うん、なんか前より男の子って顔してる」

 ちゃんと、アツヤと向き合えたんだね。
 彼女は独り言のつもりだったかもしれないけど、僕の耳にはしっかり届いた。

 雷門中のみんなが白恋中にやってきて、一緒に宇宙人と戦ってほしいといわれ、旅に出た。旅先で色々な戦い、出来事があった。『完璧』であることの本当の意味を知った。アツヤがいないとダメなんだと思ってたけど、そうじゃなかった。

「色々あったけど…雷門イレブンとして戦えて良かったと思ってる」
「うん」
「アツヤのことも、今回の旅がなかったらきっと何も気づかなかったと思うから」
「うん」
「ねえ彩子、僕と付き合って」
「うん。……え?」

 彩子の目が見開く。驚いた表情がかわいくて、思わず額にキスを落とした。

「なっ、なにしてるの?!」
「もっとしてほしいの?」
「話を聞いて…!」

 僕の頭をひっぱたいてから、真っ赤になった顔を隠すように後ろを向く彩子。我慢できなくて後ろから抱きついた。こんなことされると思っていなかったからか、同時に彩子が持っていた傘が地面に落ちる。

「ちょ…っ」
「ごめんね、僕がずっと不安定だったから」

 本当は、お互いに両思いなことに気付いていた。だけど、僕は僕のことで精一杯だったし、彩子はそんな僕をずっと見ていたから、きっと色々遠慮していたと思う。

「もう、大丈夫だから。今まで僕が彩子に甘えてたから、これからは彩子にいっぱい甘えてほしいんだ」

 だめかな? そこまで言うと、不意に嗚咽が聞こえた。動揺して腕の力を少し緩めた瞬間、彩子が反転して僕に抱きついてきた。

「ばかぁ…」

 背中に回された腕に力が入る。きっと、待たせてしまったんだな。流石に少し反省した。でも多分、これも僕らに必要な道程だったんだ。

「絶対、幸せにするよ」
「散々待たされたんだから、してもらわないと困るよ」

 抱きついたまま顔だけ僕の方に向けてかわいいことを言うものだから、つい我慢できなくなってまたキスを落とした。今度は唇。彩子はまた驚いた顔をしたけど、ちょっとくすぐったそうな表情をしたあと、背伸びして僕に同じ行動を返してくれた。

 遠回りもあったけど、ここからが僕らのちゃんとした始まりになる。かつて全てが終わったと思った場所で、新しいい一歩を迎えられるなんて、僕は幸福者だって。今ならそう思える。
 アツヤ、見ててね。アツヤの分も精一か杯これからを生きるよ。
 一瞬だけ強く吹いた暖かい風が、後押しするように背中をたたいた気がした。



【ここからまた、はじめよう】




☆二期終わって北海道帰ったくらいのつもり。

 20111109 ayako,i

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