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「最近すげぇ可愛い下着ばっか」
 深いとは言いにくい胸の谷間に顔をうずめながら虎徹が笑った。吐息がさくら色の肌を掠めてバーナビーの肩が震える。気付いてもらえたことが嬉しかった。シーツを握りしめていた両手で虎徹の両頬を包むようにしてこちらを向かせる。
「虎徹さんに見てほしくて、選んでるんですよ」
 きっと自分は今とても幸せそうな表情をしているだろうと互いが思った。福音を漏らす唇に口付けようと虎徹が首を伸ばせば、それに応えるようにバーナビーが顔を寄せた。


 とろけるように甘い口付けを交わしながら虎徹の手が真っ直ぐにバーナビーの太腿の間へと伸ばされた。指1本でいたずらに内腿をなぞれば、虎徹の望みとは反対に、柔らかな腿が合わさって目的の場所を隠してしまう。
 膝を擦り合わせている姿を見れば、彼女の体が何を欲しているかは明確だというのに、本能を上回る羞恥が彼女を素直にさせない。厚い厚いその壁を取り払ってやる所から、虎徹の仕事は始まる。
「バニーちゃん、あんよが邪魔よ?」
 滑らかな肌を撫でながら子どもに言って聞かせるような口調で虎徹は囁いた。羞恥に頬を染めたバーナビーが潤んだ瞳を向ける。言外に「嫌です」と語りかけてくる視線には柔らかい笑みだけを返して、膝裏に指を滑らせる。
 目の前の男からの無言の要求に応えるかどうするか、考えあぐねていたバーナビーがついに折れた。ぎゅっと閉じていた太腿の力をじんわり抜くと、すかさず浅黒い手が太腿の隙間に入ってくる。
 熱くてかさついた男の手がバーナビーの肌を官能的な手つきで撫でる。明確に感じる体温の差にゾクゾクした。
「…良い子だな、バニー」
 雄臭さを隠そうともしない低音がバーナビーの鼓膜を擽る。直接的な刺激ではないのに、背筋が痺れた。下着の内側がじゅわっと湿った気がして、一瞬のうちに身体が熱くなった。蝋燭の火のようにとろとろとしていた炎が一気にガスバーナーのそれになる。
 太腿の内側をくるくるとなぞるようにして虎徹の手が核心に近づく。下着と足の付け根の境をなぞっては再び足を撫でる手つきは焦らしているとしか思えず、無意識のうちにバーナビーの腰が揺れ出した。
「もう欲しいの?かわいい…えっちなバニーちゃんかわいい」
 羞恥を煽る言葉をいくつも投げられて、バーナビーの頬にさっと紅がさす。感情が昂って泣きそうだ。いや、実際泣いていた。眼球に水膜が張ったことに気付く前に目尻からぼろりと滴が零れた。
「おじっ…さん……も、やだぁ………ほし……ですっ…」
 涙声の訴えには優しい微笑を。可愛い要求には相応の対応を。何度めかの往復の末に虎徹はやっとバーナビーの下着に触れた。クロッチ部分を指で何度かなぞって、色が変わった部分の面積を増やそうとする。
 その間にも零れ続ける大粒の涙を舌で受け止めて、頬に音をたてて口づけをした。優しい愛撫を加えながらも虎徹の言葉は止まらなかった。
「こんなに濡れてる……このまま指入っちゃいそう」
 下着越しに浮き上がった割れ目に指を添わせて第一関節が見えなくなる程度に指を埋めた。くちゃくちゃと音をたてながら何度も膣口に指を挿入しようとする。布越しに指が入るはずはないのに、バーナビーは言い知れぬ恐怖に陥って必死に首を振った。
「やっ、やですっ…だめ…!」
「んー?でも入っちゃいそうだよ?」
 至極楽しそうに虎徹が言う。玩具で遊ぶ無邪気な子どものような言葉が、今のバーナビーにとっては恐怖でしかなかった。
 何度も「やめて」と繰り返すうち、やっと虎徹が下着から指を離した。安堵するより早く、今度は顔を寄せてくる。
「こてっ……ッ!ん、ん…っ!」
 ニヤニヤと表情を崩した虎徹がクロッチ部分に鼻先を強く押しつけて、大きく息を吸い込んだ。しっかりと通った鼻筋が肉芽を押しつぶして、電流のような刺激がバーナビーの背中を駆け抜けた。ビクリと震えた体に気を良くした虎徹がそのままグリグリと鼻を擦りつけてくる。
「あっ、あ、こてつさ、んッ!やっ、それ、やですっ」
「はぁ……それって?」
「んっ、ん、それっ、ぐりぐりするのっ…」
「これ?」
 言いながら再び虎徹の顔がバーナビーの股間に埋まる。腿に触れる荒くて熱い息も相俟って、バーナビーの限界はもうすぐそこまで来ていた。自分でも耳を塞ぎたくなるような甘ったるい声が部屋を満たす。
「やぁんっ!あ、あ、だめっ、も、だめですぅっ」
「もうイくの?はやいなー」
「も、もうだめ、っイ…ッ!…………?」
 感極まったバーナビーが両の腿で虎徹の頭をぎゅっと挟んだその瞬間に、虎徹は顔を離した。あともう少し、ほんの少しあの刺激が続いていたら達することができたのに。
「なん、でっ……」
「まだ早いって」
 文句を言おうかと視線を下方に向けると、意地悪く口の端を持ち上げた虎徹と目が合った。八重歯の覗く唇から重く吐いた息は湿っていて熱く、明らかに興奮しているのが見て取れる。薄闇の中でにんまりと笑んだ虎徹に、バーナビーの背筋が戦いた。
 体を起こした虎徹がベッドヘッドに手を伸ばす。ローションか、スキンか、はたまた大人の玩具かとバーナビーは思案していたが、虎徹の手にはいつの間に持ってきたのか、例のキャンディがあった。
「もうちょっと遊ぼ?おじさん、良いこと考えちゃった」



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