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いつの間に眠りに落ちたのか、目が覚めるとバーナビーは虎徹の腕の中にいた。
身体が鉛のように重い。
昨夜はあれから何度となく交わって、怠くてたまらない身体を引きずって互いにシャワーを浴び、身体を洗ってもらううちに高ぶって結局バスルームでも交わり、そこから先の記憶がない。
ベッドまで虎徹が運んでくれたのだろうか。
背中越しに触れる体温が心地好くて、目を開く気分にはなれなかった。
このままもう一度、眠りに落ちてしまおうか、そんな誘惑に駆られたが虎徹の声に重い瞼を開いた。

「んァ……、おはよ」
「……おはようございます」

虎徹も目を覚ましたらしい。昨夜のことを思い出すと顔が火照った。
虎徹の顔が見れず背を向けたままでいると、虎徹が身体に腕を回してきた。
反射的に身体が緊張で強張る。
触れる素肌の感覚から、お互いに下着も身につけていないらしいことがわかり、更に顔が熱くなる。

「バニー、腕冷えてんなァ」

緊張しているバーナビーに対し、虎徹はいつも通りの緊張感のない態度で、体温を分け与えるようにバーナビーの腕の上に自分の腕を重ねてきた。
そんな虎徹に感化され、バーナビーの緊張も解けていく。
自然と口元に笑みが浮かんだ。

「……平熱が低いんですよ」
「へぇ、何度?35度代とか?」
「35度7分です」
「低っ!ちゃんと飯食わねぇからだ」

二人で何気ない会話を交わしていると、バーナビーの肩が震え出した。

「……バニー?」

どうかしたのかと名前を呼んでみたが、どうやらバーナビーは笑っているらしい。
クスクスと笑い声が漏れ出した。

「なんだよ、何笑ってんだよ」

わけがわからず困惑顔で尋ねる虎徹に対し、バーナビーは質問には答えず身体の向きを虎徹の方へと向けてきた。
胸元に顔を向けると、額を胸板へと押し付ける。
何を笑っているのか理解はできなかったが、虎徹はバーナビーの柔らかな髪を優しく撫でた。

「やっぱり、虎徹さんには敵わないなって」

虎徹さんはいつから僕の気持ちに気付いていたんだろうか。
僕自身、最近気付いたというのに。
そして、僕はこの気持ちを告げることすら躊躇っていたのに、虎徹さんはあっさりと一線を飛び越えてしまった。

「ん?何が?」
「わからないなら、いいんです」

髪を撫でてくる虎徹の指先の感触が心地好い。
バーナビーは再び瞼が重くなってくるのを感じた。

「虎徹さん」
「ん?」
「……もう少し、眠ってもいいですか。まだ眠くて」

本当に気怠そうなバーナビーの様子に、虎徹は苦笑を漏らした。
昨夜は無理をさせ過ぎたかもしれない。

「ああ。寝とけ寝とけ。朝飯、作っといてやるよ」
「はい……」

虎徹が髪を撫でていると程なくバーナビーが寝息を立て始めた。
警戒心のかけらもない無防備な寝顔に、虎徹の頬が緩む。
最後にもう一度頭を撫で、朝食を作るため、虎徹はバーナビーを起こさないようそっとベッドを抜け出した。



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