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「っ…く、ァ……」
先程まで感じていた気持ちよさなど一瞬で吹き飛んだ。
無理矢理身体を拡げられる苦しさにバーナビーの瞳から涙が溢れる。
男を受け入れたことのないバーナビーの中はとても狭く、虎徹はバーナビーの涙に気付きながらも強引に根本まで穿った。
「…ッ、きっつ……」
「あ…痛、もう、抜いて下さい…」
涙をぽろぽろと零すバーナビーに虎徹は動きを止め、溢れ出す涙を指先ですくった。
「さっき、指でしたときは気持ちよかったんだろ?なら、大丈夫だ」
何が大丈夫だと言うんだろうか、ちっとも大丈夫ではない。バーナビーは首を左右に振った。
両目から止まらない涙が零れる。
「む、り……です……」
駄々をこねる子供を目の前にした時のように、虎徹は苦笑を漏らした。
「無理だっつっても、止めねぇぞ」
繋がったまま身体を倒し、涙が止まらないバーナビーの唇を塞ぐ。
下唇を舌先で撫で、唇の間から舌を忍ばせるとバーナビーの舌を探り当て絡ませる。
先程のキスとは違い、優しく宥めるようなキスを繰り返すうちバーナビーの身体の緊張が解けてきたのがわかった。
息つぎの合間に、バーナビーから甘い吐息が漏れるようになってくると虎徹はゆっくりと腰を引いた。
「ふぁ……、や、だ、そこ……」
浅い所で腰を揺らすと、バーナビーの中はひくひくと波打つ。
「あ、……おじさんっ…」
シーツを握りながら身をよじり、切なさに似た快感をバーナビーが訴えると、虎徹の眉尻が情けなく下がった。
「おじさんて。セックスん時くらい名前呼んでくれよ」
虎徹に促され、バーナビーはまだ一度しか呼んだことのない、呼び慣れない名前を口にした。
「……虎徹さん」
「おぅ、バーナビー」
視線が合うと嬉しそうに虎徹が微笑み、バーナビーもつられて笑みを浮かべた。
相変わらず苦しいのは変わらないが、もう苦しいだけではない。
穏やかな律動は心地好く、自分の中に出入りする物が虎徹の物だと意識するとバーナビーの中は疼いた。
「うっ……」
虎徹からも声が漏れる。
その声にバーナビーが視線を上げると、眉間に皺を寄せつつも恍惚とした表情の虎徹の姿が見えた。
見たことのない虎徹の顔に、胸が高鳴る。
部屋の室温は適温に保たれているはずなのに、興奮のせいで互いの身体はしっとりと汗ばんでいた。
「……虎徹さん」
名前を呼ぶと視線が合った。
包み込まれるような穏やかな眼差しに、今なら何を言っても赦される気がして、バーナビーは告げるつもりのなかった言葉を口にした。
「虎徹さん、……好きです」
「知ってる」
バーナビーは翡翠色の瞳を大きく見開いた。
「俺も好きだよ、バーナビー」
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