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「あ…っ……触るな、いやだ!」
「こんなにしといて、よく言うよ、バニー」
どうしてこんな展開になったのか、わけがわからない。
虎徹はバーナビーの脚の間に顔を埋め、バーナビーの性器を文字通り弄んでいる。
舌を這わせ、手で擦り、すっかり上を向いているそれの先端を舌の先で抉られて、バーナビーは虎徹の髪を握った。
「も、ぉ……」
「んー、一回いっとく?」
虎徹は大きく口を開くと、躊躇うことなく喉奥までくわえ込んだ。
それでも、バーナビーのはサイズが大き過ぎて、虎徹の口には収まりきらない。
くわえきれない部分は手で扱きながら、頭を上下させて唇と舌と喉を使って搾ってやると、バーナビーは呆気なく果てた。
虎徹の喉仏が動くのを視界の端に認めて、バーナビーは目許を腕で覆い天井を仰いだ。
「……ハハッ、いっぱい出たなあ」
当の虎徹は相変わらず軽い調子で笑い、バーナビーの肩を押して床へと二人一緒に倒れ込んだ。
「はぁ……、なんで、こんな…」
おじさんは僕の気持ちを知っているんだろうか。知っていて、こんなことを仕掛けてきたんだろうか。
聞きたくてたまらないのに、答えが怖くて聞くことができない。
前髪を掴まれ、顔を寄せられ唇を塞がれた。
顎にチクチクと触れるトレードマークの髭。
舌を捩込まれ、自分が吐き出した精液の苦い味が伝わってくるのは不快だったが、口の中で動き回る虎徹の舌は熱くて頭の中が蕩けそうになる。
こんなおじさんは、知らない。
おじさんがこんな人だとは知らなかった。
けれど、無理もないことなのかもしれない。
まだ知り合って数ヶ月なのだから。
バーナビーの元に、虎徹が訪ねてきたのが数時間前のこと。
「お前、ちゃんと飯食ってる?」
なんて、いつものお節介で食材持参でやってきた虎徹を追い返すことができなくて、バーナビーは渋々彼を招き入れた。
手際よくチャーハンを作り、チャーハンにまでマヨネーズをかける虎徹にバーナビーは顔をしかめつつ、二人で穏やかに食事をした。
雲行きが怪しくなってきたのは、食後二人で飲み始めてからだ。
互いにアルコールが回り出した頃、絡む調子で虎徹が尋ねてきた。
「お前さ、彼女とかいねぇの?」
これは以前も聞かれたことがある。
いない、そう答えてそれ以上の会話はバーナビーから拒絶したので、虎徹もそれ以上は聞いてこようとしなかった。
「いませんよ、作る暇もありませんから」
「またまたぁー、モテるくせに」
僕はここで会話を終わらせたかった。
これ以上は答えたくはない、余計なことを口走ってしまいそうで。
意思表示としてバーナビーは虎徹を睨み、一気にグラスの中のワインを煽った。
「じゃあさ、セックスしたいときはどーすんの?」
「なっ……、セッ……げほっ…」
思わぬ質問に、飲みかけのワインがむせて咳き込んだ。
「あーあぁ、大丈夫?バニーちゃん」
咳き込んでいるバーナビーの背中を虎徹が撫でた。
何気ない行為のはずなのに、虎徹に触れられたバーナビーの肩がぴくりと跳ねる。
今思えば、その反応がまずかったのかもしれない。
いつものように、平静を装えば良かったのに。
「……大丈夫、です…」
カッと顔が熱くなる。
動揺を気付かれてしまっただろうか。
不安に思いながらもバーナビーは虎徹の手を払った。
だが、背後から抱き竦められてしまった。
「っ……、おじさん…?」
「バニーちゃんてさ、いい匂いがするんだよなァ」
突然のことに訳がわからずにいると、おじさんが僕の首筋に鼻を押し付けてきた。
息がかかりくすぐったくて、僕は首を竦めてしまう。
その上、首筋に濡れた舌の感触が触れて思わず声が漏れた。
「んっ、あ……」
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