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バーナビーの瞳が再び光を映した時には既にベッドの上だった。
いつ置かれたのか、放置していた眼鏡を枕の横で見つける。
それを手にとり時計に目をやると朝の6時。出勤にはまだ余裕があった。
軽い頭痛は二日酔いのせい。
普段酔わない酒量で泥酔したのは虎徹の言う通り空きっ腹に摂取したからだろう。

では膝と背中がヒリヒリするのは。

バスルームでの痴態を思い出し頬が熱くなる。

適当にかけられた布団を捲ると、汗もワインも精液も綺麗に拭われてバスローブを着る自分の体が目に入った。

最初の約束通りに虎徹が洗ってくれたのだろうか。
そもそもかなり長身で体重もそれなりにある自分をここまでどうやって運んだのか。

「能力使ったのかな……」

そうでないと幾ら普通の人間より腕力のある彼であろうと不可能だ。
ご丁寧に下着まではいてある。

ふらつく体を起こし、虎徹の元へ行く。
目が覚めてそこにいない時はリクライニングチェアで寝ているのがお決まりのパターンだ。

今朝もそれに漏れず定位置に寝姿を見る。

寝坊した時の為にだろうか、準備したバスローブではなく昨日の服を身に付けていた。

眠る虎徹の顔は実年齢より若干若く見える。
常に若い仲間といるからだろうか。
否、子供っぽい性格が滲み出ているだけだろう。

夜の彼と同じ人間とは思えないな、とバーナビーは静かに笑う。
彼もまた自分を見てそう言うだろうけど。

バスルームへ行って洗われた床に彼の意外な几帳面さを見て感嘆する。
歯ブラシとコップ、それにグラスはそこに置いたままだった。

洗面台にそれを戻してペーストの香りを嗅ぐ。
虎徹のキスと同じ香り。
嗅覚から情事を反芻するのは勿論虎徹には秘密だ。

「……好きですよ、おじさん」

20年間置き去りだった感情をくれた人が残した腹の紅を指で撫でて、バーナビーは彼の為にコーヒーを淹れようとグラスを手にキッチンへ向かう。
二人の朝が今日も始まろうとしていた。


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