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脱衣場やバスルームに何があるのか知っている虎徹は、コンシェルジュが綺麗にクリーニングしてくれたバスローブとタオルを用意する。
それから自分専用に買っておいた歯ブラシとコップ、強ミントのペースト。

浅い浴槽はすぐ湯が貯まり、バスルームはもうもうと水蒸気に満たされた。

「酔いざましには熱い風呂だよな」

石鹸を泡立てシャワーで汗をさっと流し、長身の虎徹でも足を伸ばせる程広い浴槽に全身を浸す。

「あ〜やっぱり最高だよなぁ、風呂はこうやって入らねえと」

バーナビーは虎徹が来ない日はシャワーで済ませる。
それ以前にバスタブの使い方もよく判っていなかった。
教えてやっても、面倒だからと存在を無視していた。

「勿体無い、こんないい風呂なのに」

体を浸けたまま、歯ブラシにペーストを絞る。
ミントの香りが鼻をくすぐるそれは虎徹のお気に入り。
口に入れて歯を擦れば、キンと冷たさに似た刺激が歯茎を刺す。
泡立ちはあまり良くない。
モコモコした泡が苦手な彼に誂えたような物だった。

アルコールの残り香がかきけされてゆく。
そういえばあのワインは大層甘かった。
ピンク色に軽くオレンジがかった、まるでバーナビーの紅潮した肌の様な色。
稀少なんだか知らないがやはり自分はワインなら赤がいいかなと思った。
バーナビーは薫りがどうやら舌触りがこうやらと感想を並べていたが、あの酔い方だ、覚えているのだろうか。

風呂に浸かったまま手近の水道に手を伸ばし、コップに並々水を入れて口をゆすぐ。

「ぷはぁ」

香料の甘さが流れだし、スゥとしたミントの香りだけが残る。

「……貴方はまたお風呂、で歯を磨いて……止めて下さいって、言ったのに……」

「バ、バニー!お前あんなに潰れてたのに大丈夫なのか!」

音を立てずいつの間にか全裸になったバーナビーは、ロゼがほんの少し残ったグラスを持ったままバスルームに入ってきた。

「僕の家、なのに狡い……僕も入ります」

自由にしろ、と言った記憶ももう無くした様だ。

「大丈夫かお前……とりあえずグラス危ないから置いてこいよ、何で持ってきちゃったんだ」

「面倒くさい……ここに置いときますから……」

風呂場の隅にグラスを置いて乾いたタオルをかける。

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