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バーナビーの自宅マンションの鍵を開ける頃、もう日付が変わろうとしていた。
ご機嫌よろしく着替えている最中に事件が発生し、出動要請がかかったのだ。
一気に表情を曇らせたバーナビーを虎徹が引っ張り、犯人確保こそスカイハイに奪われたが何とかポイントも挙げられた。
「もうこんな時間……明日も仕事なのに……」
「仕方ねえだろ、お呼びがかかったら無視するわけにもいかねえし」
大事そうに箱を抱えるバーナビーの後から、コンビニの袋を下げた虎徹がついて入る。
「今日はこれくらいしか飲めないですよ」
戸締りをして、虎徹の鼻先にその箱を付き出す。
あくまで、ワインは今日飲むスタンスで。
「いいだろ、余ったら置いとけば。どうせまた来る事あるんだし」
帰宅途中のコンビニで買った大量の酒類は、一番大きなサイズの袋をいっぱいに膨らましている。
「そうですけど。冷蔵庫が占領されそうです」
「んな事言って、水と炭酸とドリンク剤くらいしか入れないだろお前」
「て言うか、僕貴方についてきていいなんて言いましたっけ」
「お前の運転でこうやって来てるってことは言ったんじゃね?」
虎徹の車を会社に停めたまま、バーナビーの車一台でここまで来た。
道中文句ひとつ言わず、今更の様にこう切り出すのは時にある事。
無条件で来宅を受け入れた照れ隠しだと虎徹は判って、やはりいつもと同じ返事をした。
テーブル脇の床に無造作に袋を置いて、一つしかないリクライニングチェアに腰を落ち着ける。
「ちょっとは遠慮って物が無いんですか貴方は」
「俺とお前で何処にそんなもんが必要よ。普段遠慮の無い口してるくせに」
ハンチングを脱いで「ほい」とバーナビーに渡すと、当たり前の様にそれを受け取った。
寝室には虎徹の帽子を置く定位置まである。
ふぅ、と軽く息をついて、ワインの為のグラスを用意する為にバーナビーは部屋を出た。
この部屋の主は自分の筈。
それなのに毎度虎徹のペースに流される。
そんな自分が何故か嫌いではなく、浮かぶ笑みを今日も噛み殺した。
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