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自慰の後で虚しく感じながらシャワーを浴びて後処理をして部屋に戻れば電話が鳴っていた。
珍しくネイサンからだった。どうしたのかと聞けば、
「ちょっと面倒な事になったから助けてほしいのよ」
と何故か酒場の名前を告げられ、そこに来いと言われた。
理由を聞こうにもあっという間に通話を切られて仕方なしに準備をして家を出た。
酒場に着くとこれまた珍しく泥酔した虎徹とネイサンとアントニオがいて、二人に虎徹を家まで連れていってやるよう頼み込まれた。
そして何故自分が、と道々一人愚痴をこぼしながら虎徹を家まで支えて帰ってきた。
ベッドに酔っ払いを投げ捨てると、彼はうっすら瞼を開いた。
「…あ、すいません起こしてしまいましたか?」
「ん、ばにぃ…?」
「はい、僕ですよ」
虎徹が伸ばす手を握ってやると彼はへらへら笑った。
「ばにー、ばにー、ごめん、こないだ…」
「っ…もう、いいですって…」
「俺、おまえがセフレなんて言うから悲しくて…一緒にいるうちにおまえがちゃんと好きって言ってくれるの、待ちたかったんだ……」
「……え…」
思ってもみなかった。虎徹がそんな事を考えていたなど、微塵も思わなかった。
虎徹が起き上がってバーナビーの頬を両手でそっと包んだ。
「でもお前がかわいすぎて…おじさん、我慢できなかった…はは…。ごめんな、バニー。好きって言ってくれて、ありがと」
頬にくちづけられ、耳元で囁かれる。
「…俺も好きだ、バニー」
ぽろりと一粒雫が落ちた。
「…ちょっとバニーちゃん、包丁の持ち方危ないって!こう持つの」
「あ、はい…こうですか?」
戻ってきたのは以前と同じ様で少し違う日々。変わったのは二人の間に流れる暖かな空気。
「そうそう。やっぱりバニー器用だし努力家だし、良い嫁さんになりそうだなー」
「…なに言ってんですか……」
冗談で昔の様に軽口を叩いたり喧嘩する事もあれど、それすらも愛おしい。
「え、いやーバニーが俺の嫁になってくれないかな、って…」
「………まぁ、考えておきますよ」
幸せだと思う。
虎徹の声や眼差しから愛されていると確かに実感できる。
そのたびに目頭が熱くなったりもするけれど、涙する事すら幸せに感じる。
「虎徹さんって…本当に爪短いですよね…痛くないんですか?」
泣いているのを見られたら虎徹がすぐおろおろと慌てふためくので、何とはない質問をして誤魔化した。
「あぁ、だってバニーが痛くないようにちゃんと切っとかなくちゃいけねえだろ?」
こういう下品な事を言うのも、全て自分を愛していると思えば許せる気がした。
「だからって激しくしたら意味ないんですからね、おじさん」
ずっとこんな風に笑ってこの人と生きていきたい、バーナビーはそう思った。
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