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初めは少しグロスを塗って、自分の方にカメラを向けてみた。
けれどもやはり気恥ずかしくて、しかも上手く撮れない。
縋るような思いで虎徹の名前は出さずにアニエスに電話で相談してみると、任せて!と二言返事だった。
簡単なレフ板等まで持って部屋に現れたときは驚いたけれども、かじる程度にカメラ経験のある彼女は上手に撮影をしてくれた。
何より業界人ということで、魅力の伝え方は自分で撮った時の比にならない。
どんどんと気分が乗ってきた彼女は、やっぱりメイク呼ぶ?ライト増やす?などと提案を沢山くれたものの、そんな大ごとにはしたくないのだと丁重に断った。

『お前なあ、困ったときのアニエス頼みやめろよ・・・高くつくんだぞ?』

「そうですね、寝起きドッキリでチャラにするって言われちゃいました。先に言ったらドッキリじゃないですよね」

『バニーの寝起きの悪さばれたらファン減るだろうな〜』

さっきまでの雰囲気はどこかへいって、普段のやわらかい声が笑っていた。
それを耳にしたバーナビーはほっとして、心配させるようなことはこれからはやめようと小さく反省した。

『しかし、これまたかわいいの選んだなあ』

「っ・・・ピンク、似合わないですか・・・?」

『んーん、すっげぇ似合ってるよ。肌白いバニーにぴったりだ』

下着姿を似合っていると言われるのは、恥ずかしいようなうれしいような、なんとも言えない気持ちになる。
アニエスとのなんちゃって撮影を終えた今、バーナビーはひとり下着姿のままセミダブルベッドで体を横にしていた。
ちらりと自分のランジェリーを覗き、これにしてよかったと口に出さずに喜んだ。

『なあ、バニーは寂しくねーの?』

「?さみしいですよ」

『あ〜じゃなくて』

ぼそり、内緒話をするようなこそこそしたトーンで「ヨッキューフマンとか、」と質問が投げかけられる。
ぼんっと音を立てるように顔が赤く染まり、バーナビーは電話片手に慌てふためいた。

「それ、ぐらいっ我慢できます」

『俺もさあ、我慢してたんだけどさ、誰かさんがすんごいセクシーな画像くれちゃってさあ』

短いため息が聞こえ、さわりてーな、と虎徹の本音が漏れる。
低く掠れた声に、情事を思い出してしまった。
体だって寂しくないと言えば嘘になる。毎日とはいかないまでも、虎徹と体の関係を持つようになってから一週間と間を空けたことは初めてだった。
けれども忙しさの中でそんなことを考えていても仕方ないと、その感情に蓋をしていたのだ。
それなのに今改めてそんな話を持ち出されると、素直に虎徹に触れたいと思う。
さっき送った画像に虎徹がもし欲情していたら、そう考えるとまた顔が熱くなってしまった。
しかし、互いが隣にいない今、そんなことを思っても意味がないのだとまた自分に言い聞かせる。

『バニーの胸ってどんな硬さっだったっけ』

「はぁ?」

『ぜんぜん触ってないから忘れちゃった』

そう言われると自然に自分の胸に手が伸びていた。
もちろん、そんなことは虎徹に報告しない。

「硬くはないと・・・思うんですけど」

口には出さないけれど、少しむっとした。
硬さ、だなんて表現はやめてほしい。せめて柔らかさと聞いてほしかった。
もしかして普段から硬い胸だと思われていたのだろうか。
ふに、鎖骨より下の方へと指を沈める。
虎徹に触れられるようになってから、以前より豊かな丸みを帯びるようになった。
淡い弾力を確かめていると「俺の代わりに触ってみて」と言われたが、まるで意図がわからない。
もう触っているなんて返事はせずに、少し間をとって「さわりました」とぶっきらぼうに返事をした。



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