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「洋服とかと値段そんなに変わらないんですよ、知ってました?」

『それはアニエスが行くような店だったからじゃねーの?』

確かに、比較的値頃な店はいくらでもあるけれど今日のアニエスは、
若いうちから良いもの使っておきなさい!と耳にタコができるほど繰り返していた。
それを見習おうと思うだけのスタイルをアニエスは保持していたし、何より気に入るものが見つけられたのでそれで満足できている。
若いうちから、と今日何度も聞かされた言葉を真似してみると、虎徹はあまり興味が無さそうに女は大変だなあと声を漏らした。

『で、今はどんなのつけてんの?』

「・・・・・・・・きもい・・・・」

『えー?そういう雰囲気じゃないの?おじさん知りたいなあ』

声のトーンが少し甘くなったのがわかる。
白々しく誘ってくるときのトーンと同じだ。
けれどもバーナビーは馬鹿馬鹿しい程度にしか思わなかった。セクハラのようなものだ。
こっちが恥ずかしがれば恥ずかしがるほど調子に乗って相手のペースになるというのが読めている。

「・・・ピンクです。虎徹さんは?」

『ぅえ?俺の知りたいの?』

「僕だけ言うのは不公平でしょう」

そう言いながらごろりと寝返りを打つ。
ちらり、となんとなく話題になっているキャミソールの中を覗いてみる。
エステとスパを終わらせ、新調したばかりのブラジャーとショーツを身に着けてきたところだった。
結局、下着の試着姿をアニエスにもドラゴンキッドにもカリーナにも見られてしまったけれど、三人ともこれを可愛いと言ってくれた。
自分一人だと絶対に選ばない薄桃色をした総レース柄のランジェリー。

『バニーちゃんのえっち』

「どっちが・・・」

『あれ?ピンクとか持ってたっけ?』

どきり、と心臓が鳴った。
今つけているもの云々ではなく、虎徹が下着の種類を把握していることに驚いた。
とは言え、特別に記憶力がいいとかそういうことではない。
バーナビーが自分で選ぶものは色気のない黒やベージュが多く、色味があったとしても白やアイボリーなどでピンクというのは少し意外な色味だった。
今日買ったものだと正直に答えれば、すぐに「見たい」と声が返ってくる。

「見たいって・・・帰ったら」

『いま見たい』

珍しく食い下がってくる虎徹に困りながら、今は無理ですよ、と告げる。
バニーのカメラ壊れてないだろ?機嫌の、というより調子の良い声が聞こえる。
その意味がわかってバーナビーの頬はみるみるうちに赤く染まっていった。
きっと隣にいたらまたからかわれているだろう。
今だけは虎徹が隣にいなくてよかったと心底思った。

「馬鹿じゃないですか?」

『え〜みんなやってるって』

「みんながやっていても僕はしません」

『ほら、水着の撮影と変わらないだろ?』

そう言われると、少しバーナビーの中のガードが緩んだ。
確かに、今までも際どい服装や水着での撮影もあった。露出面積だけのことを言えば水着も下着も実際変わらない。
それに雑誌に載って見ず知らずの他人に見られることを思えば、まだ相手が虎徹というだけでかなりマシな部分はある。
けれどもやはり、そんなふしだらな真似は出来ない。
裸を見せろとまでは言われていないにしろ、裸に近いものを自ら撮って送るだなんて、そんなことしたこともない。
埒が明かない攻防戦を繰り返していたものの、意外と決着はすんなりと着いた。



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