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「しかも?やっと電話できると思ったら?カメラ機能壊れたってどういうことですか?ほんっとありえない」

そう簡単には話を逸らすことはさせてもらえず、いつの間にかまた怒りがヒートアップしかけている。
アポロンメディアの社員や他のヒーローに聞かれてしまう可能性があるPDAでプライベートな長話をするのは難しいこともあって、
こういう時に連絡を取り合うのはいつも私用の携帯と決めてある。
そして、今使わないでいつ使うのかという肝心な時に限って虎徹は携帯のカメラ機能を壊してしまった。
バディになってからこんなに離れて過ごす期間は初めてで、顔が見れないということがこんなにも辛いものかとバーナビーは心底思い知った。
せめて、と自分で写真を撮って送ってほしいとねだってみてもカメラ機能が壊れてしまった今、どうすることもできない。

『もうそれは300回ぐらい謝っただろー?あんまりしつこいと嫌われちゃーうぞっ』

「誰にですか」

『うそうそ、本当に悪いと思ってるって。ごめんな?でもさぁ』

せっかく久しぶりに声聞けたんだから喧嘩とかじゃなくてもっと楽しい話がしたいなあ。
大好きな声が耳元の小さなスピーカーから流れると、バーナビーはいつものように抱きしめられている気持ちになった。
そうして改めて、いまここに虎徹がいないことを再認識してしまい、喉の奥がぎゅうっと詰まる。


『バニー?』

「・・・・・はい」

『会えなくて寂しいのはバニーだけじゃないから』

はやく会いたいなぁと漏らす声を聞きとると、それだけでさっきまでの怒りがどこかに吹き飛んでしまった。
本当は怒りたいわけじゃなくて、甘えたいだけ。
いつもみたいにがんばったな、って撫でて欲しくて、抱きしめて欲しいだけ。
それなのに、忙しかったり声が聞けなかったりといつの間にか苛々とした気持ちをぶつけてしまっていた。

『なあ、こっち帰ったらどこ行きたい?デートしよっか』

機嫌をとるように話を続ける虎徹の声をもっと近くで感じていたくて、バーナビーは目を瞑った。
そして腰かけていたベッドへ後ろからそのまま倒れてみる。
五つ星のホテルということもあって、ふかふかにベッドメイクされていて沈み心地は悪くない。
けれど、どんな一流の羽毛の肌触りも虎徹の腕の中には敵わなかった。

「・・・虎徹さんの家に行きたいです」

『そんなんでいいのかー?せっかくなんだから車出してさあ』

「虎徹さんにはやく・・・・その、・・・あ、なんでもないですっ」

半ば無理矢理に言葉を濁すと、受話器の向こうが続きをせがむ様にうるさい。
もっと素直になって、というか今の勢いで、抱きしめて欲しいと言えば良かったのに。
きっと言えた方がこんなに恥ずかしい気持ちにならなかったはずだ。

「き、今日は何されてたんですか?」

『えー?きょうは仕事行って、あ、ロイズさんに怒られてさ、
あの人気ぃ短いよなあ。あ、斉藤さんにも叱られたわ、あれなんでだったっけなー?』

話のすり替えに乗ってくれる虎徹は優しいと思う。
そして特別な事のように怒られた話をするけれど、それはもう日常茶飯事だ。
それでも、何でもない普段の話を聞いていると帽子を胸に抱えながら怒られている虎徹の表情や、そのあとに事務処理を放棄しながら昼寝をしている姿が瞼に浮かぶ。


そして次はバーナビーの一日の様子を再び聞かれた。
ショッピングではどんな服を買ったのか、次に会う時はそれ来て見せて、そんなことを言われるとくすぐったい気持ちになる。

『靴も、バッグも、へえ〜女同士の買い物ってすごそうだな』

「あと、下着もたくさん・・・アニエスさんに選んでもらいました」

『それは帰ってきたら一番にチェックしないとだなあ』

虎徹と深い関係になってから、以前よりバーナビーは下着にも興味がいくようになっていた。
その上サイズも窮屈になった気がしていて、思い切ってアニエスに濁しながら相談するとすぐさまランジェリー専門店のフィッティングに押し込められていた。
服を脱いで店員に無遠慮に胸のアンダーとトップにメジャーを当てられて、合うカップ数を教えられる。
その時バーナビーは、そういえばサイズを測ることが初めてだったと気付いた。
それから、試着はタダなんだから!とアニエスに勧めらるがままにひたすら着けては外しを繰り返し、
下着にも試着があるということを初めて知った。
そして下着を4セットにベビードールやルームウェアも選ぶと、結構な値段になったことにも驚いた。


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