猫の力



「蒼火墜!!」

十三番隊隊舎裏の修練場から大きな衝撃音がした。

「まだまだだねぇー。
 詠唱破棄できても威力が弱いんじゃあ意味ないよー」

名前が京楽に蒼火墜を向けるが、いとも簡単に手で弾かれる。
軌道を逸れた一撃は岩壁に当たり砂埃をあげるが、名前はすかさずその中から京楽へ刃を向ける。名前には確かに何かの感触がつたわってきたが、仕留めた感触ではなかった。

「霊圧の感知が得意な君らしい攻撃だけど、それは僕も同じ。
 それに、この攻撃は君のリスクも高いねぇ」
砂埃が晴れると、名前の目の前には片手で名前の斬魄刀を押さえている京楽の姿が目に飛び込んできた。

「…残念でした」

驚く、というよりも、至極悔しそうな表情をする名前に京楽は意地の悪い笑みを浮かべた。
その表情に名前は下唇を噛んだが、直ぐに次の攻撃に移った。
京楽は隊長格、名前は平隊士。
名前がいくら頑張っても、京楽に方膝を尽かせることはおろか、刀を抜かせることもできないだろう。
今回の訓練あくまで霊力の増強であって、京楽倒しではないが、はたから見ればもう白熱し過ぎたただの戦闘訓練だった。

そんな様子をゆったりと見守るようにして浮竹は一人お茶を啜っていた。

「浮竹隊長」

そこに檜佐木がやってきた。
瀞霊艇通信を掲げて、浮竹に手渡しして背伸びをした。
相変わらず忙しいようで、その顔は疲れきった表情をしていた。

「前にも似たような光景見た気がするんスけど…」

檜佐木はそういいながら崖から下を覗き込んだが、このまえとは打って変わった状況に驚いた顔をした。

「京楽隊長と…女の子…?」

浮竹が「今回は両方若い子じゃなくて残念だったなあ」とからかうと、檜差木はどもって曖昧な返事をした。
だか、少しの間そうやって静かに眺めていたかと思うと真面目な顔つきで浮竹の方を向いた。

「あの子、力は弱いですけど…随分戦略的な戦い方しますね」

「あの子の力が弱いにのはちょっとハンデがあるからでね。
 代わりに、京楽の戦い方を真似てみてるのだろう。
 もう少ししたらかわっていくと思うよ」

「将来有望ってわけですね」

「はは…そうかもなあ」

そんな感じで呑気に話していると修練場が急に静かになって、刀が落ちる金属の音が響いた。
浮竹と檜佐木が覗き込むと、名前が京楽の腕にだらんともたれかかっていた。
それを京楽が焦るでもなく落ち着いて、名前を抱えて刀を拾っているものだから増々檜佐木は焦った。

「えぇっ…まさかホントに…」

「いやいや。
 多分寝てるだけだよ」

「は?寝てる…?」

「ああ。
 あの子は頑張りすぎると眠ってしまうんだ。
 面白いだろう」

檜佐木にはあまりにも落ち着きすぎた浮竹にも疑念すらおぼえた。
いくら練習とはいえ戦闘中に眠るなんて普通じゃない、と考えるの一番普通だ。

そこに、京楽が名前を抱えて戻ってきた。

「名前ちゃん寝ちゃったから休憩ー」

「おう。お疲れ。
 随分頑張ったなあ」

京楽は自身と浮竹の間に名前を寝かせて、腰を下ろした。
檜佐木がすかさず名前の顔を覗き込む。

「うわーホントに…寝てる」

「ははは。だから言ったじゃないか」

「可愛い寝顔でしょー?
 十三番隊の秘蔵っ子なんだから、しかと目に焼き付けときなよー」

「またお前は…」

浮竹の呆れた声にも構わず、京楽も大きなため息をつきながら背中から倒れた。

「あー…疲れたー」

「そりゃあなあ。
 名字も大分長時間戦ってられるようになったし、それをいいことに体力の限界ギリギリまでやるからなあ…」浮竹はそう言って名前を見る。
檜佐木は先程から物珍しそうにずっと見ている。
京楽もつられて見るが、こんなに多くの視線を集めているにも関わらず全く起きる気配はない。
挙げ句、丸くなりながらごろんと京楽の方に寝返りを打つ始末だ。

「これは…暫く起きそうにないねぇ」

これ幸いとばかりに笠を顔にかぶせ、便乗して眠る体制に入った。浮竹もこれには咎める理由がなくて何も言わなかった。

檜佐木が「この様子見ちゃうと…簡単にやりたいとは言えないですけど、羨ましいっスね」と言った。
ただの平隊士が、隊長格の人間に一対一で実戦をする機会なんてめったにあるものではない。
ましてや京楽や浮竹といえば長年隊長の座に就き、様々な実戦経験がある。
単に京楽の戦法のみからも学ぶ事は多いのだから、誰しもがそう言って羨む。
だが状況が状況なだけに厳しい訓練なので、実際にやってみたいとまで言う者は居なかった。

「さてと、俺もこの子見習って頑張って来ます」

「はは。此の子手本だと、相当頑張らなくちゃいかんなあ」

「幸い、こっちには鬼コーチは居ないんで、そこそこに…」

「…だーれが鬼コーチなんだい。
 僕は女の子にはどっても優しい男だよ」

寝てたと思ってた京楽が、笠の下から聞き捨てならない言葉にすかさず口を挟む。

「まあ、今回の場合本当に怖いのは名字のほうかもなあ…」

可愛い顔してるのになあ、なんて男三人名前の寝顔を見ながら呟いた。


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猫の力ってなんだ…ウ●ンのチカラみたいだ…
この前の話と次の話の橋渡しみたいな話なんですけど…
それにしたってこのタイトルは如何なものか。
もっとマシなタイトル模索してるんですけど…
良いの無い…どなたか良いアイディアありませんかね…

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