∴成長伏彦
1→6
こいつはなんでいつもこう無茶するのか。ただの馬鹿なのか、それともただ本能のまま動いているのか。…考えるだけ阿呆らしい。こいつは馬鹿だ。そうだ馬鹿だ。
「ねぇ、彦四郎君」
「…何だ、馬鹿」
「馬鹿じゃないんだけど」
「お前なんか馬鹿で十分、いや馬鹿でも勿体無いくらいだ」
そう言えば奴ははぁ、と息を吐いた。何でお前が溜め息を吐くんだ。僕が吐きたいくらいだ阿呆。
「彦四郎君、そんなに怒んないでよ」
「怒ってない」
「任務で無茶したことなら謝るから。だからそんな泣きそうな顔しないで」
「して、ない」
「嘘、してる」
「してない!」
どうして僕がこんな奴の為に泣かなきゃいけないのだ。
もし泣きそうな顔をしているのなら多分奴が泣かないからだ。
忍と言ってもまだ忍たま。あんな酷い任務を受けやっと帰ってきて仲間も自分もボロボロ、重症の傷も負ってきた。なのに奴は泣こうともしない。確かに忍は感情を隠さなきゃいけない。だがまだ忍たまだ。まだ甘えられるのだ。なのに甘えさえしないのか。
「彦四郎君、泣かないで」
「ない、てないっ…」「流石にもう隠せないでしょ」
「うる、さい…!」
「ほら、泣き止んで」
泣き止めるものか。お前が泣かないから代わりに泣いてやっているというのに。お前が平気そうな顔でいるから代わりに泣きそうな顔でいるのに。
全てこういう時にだけ不器用なお前の為なのに。
(ああ、お願い)(あいつの傷が少しでも柔らいで)
僕の代わりに、きみが泣く