そわそわしている相手を不可解な顔で見つめる。これは先程から康太が続けている行動だ。
何故、目の前の奴はこんなにもそわそわしているのか。何がしたいのか。ただそれだけが気になっていた。



「………明久」

「ふぁい!?」



話掛けただけでどうしてこんなに驚くんだ。康太は眉間に皺を寄せそわそわしている相手、明久を見つめた。



「………さっきから何?写真か?」

「え、あの、別に何か用があるって訳じゃないんだ!いや、用はあるんだけどさ!」

「………?」



康太は更に眉間に皺を寄せた。
言っている事が可笑しくないか?用がないのに用があるなど矛盾にも程がある。



「………もう俺は帰宅する」

「え!?あ、ちょ…!」

「………」



これ以上居ても同じだと思ったのか康太は鞄を持てば立ち上がり教室の扉へと足を進めた。



「ちょっと待ってムッツリーニ!」

「………!」



もう教室から廊下へと足を踏み出す瞬間、明久が大声を出し康太を止めた。
康太もその声に驚き後ろにいる明久へ顔を向けた。



「あ、あのさ。今度の土曜日空いてたら一緒に遊園地にでも行きませんか…?」


ああ、こいつはこれを言うためずっとそわそわしていたのか。
恋愛関係になるとこんなにも不器用になるのか、こいつは。



「………」

「や、やっぱ駄目だよね!うん、大体は予想してたしさ!」

「………駄目なんて言ってない」

「え?」

「………時間は?」

「え、え?」

「………誘うなら前もって時間も決めておけ」

「いい、の?」

「………まだ決まってないなら明日聞く。じゃあ帰る」

「ま、待ってムッツリーニ!僕も一緒に帰る!」



そう言って明久は急いで帰る支度をし康太の隣に並んだ。
二人並んだ姿はとても幸せそうだった。



(貴方からの誘いを断るわけないのに)(もっとはっきり言って頂戴)





ああ、なんて馬鹿な王子様!



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