∴秀→康←明
土屋康太は今までにないぐらい困っていた。
何故こうなったのか、ただ考えても何も思いあたる節がない。
ならば何故両腕に二人の同級生がしがみついているんだろう。
「………邪魔」
「ほら、秀吉!ムッツリーニが邪魔だって言ってるよ!早く離れないと」
「何を言うんじゃ。それは明久に言っておるのだろう?早くムッツリーニを離せ」
「………二人に言ってる」
そう、しがみついている二人の同級生とは馬鹿の代名詞と呼ばれる吉井明久と女のような顔だちで演劇部のホープ木下秀吉だった。
康太が何を言っても自分達の都合のいい様に解釈され、しがみつかれたまま右から左からぎゃんぎゃんと言い合う声が聞こえるたび康太ははぁ、と息を吐いた。
「………もう、そのままでいい。とにかくくっついてる理由は何?」
諦めたのか、康太は投げやりに言えば疑問に思っていた事を二人に尋ねた。
「理由なんてないよ。ただムッツリーニがいたからくっついてるだけ」
「理由がないならくっつくでない。ムッツリーニが迷惑じゃろう。あ、わしはムッツリーニの事が好きだからくっついておるのじゃ。明久とは違うぞ?」
「あ!何どさくさに紛れて告白してるの、秀吉!僕はムッツリーニの事愛してるからね!」
「なっ…!わしは明久よりもムッツリーニを愛しておるぞ!」
両方からまた言い合う声が聞こえれば康太ははぁと息を吐き窓の外を見つめた。
(愛じゃなくて変じゃないのかな、その感情は)(いいえ!これは愛なの)
これは愛なのか変なのか