∴天馬世代
∴暗い
∴報われません。
∴天→倉→←葵
∴天馬は出ません。
∴天馬悪役につき要注意。
「駄目なんです、倉間先輩。」
そう言いながら葵は寂しそうに微笑んだ。
「なん…で、だよ…?」
葵にようやく思いを告げた倉間は両思いだと確信しての行動だったのか、予想外の答えに驚きと同様が隠せず途切れ途切れに言葉を紡いだ。
なんでだなんで、なんでだよ。その事ばかりが脳内を駆け巡った。
「駄目なんです。駄目なんですよ、先輩。」
「……なんで。」
「駄目、なんです。」
「だから!なんでだよ!」
先程から同じ事しか言わない葵に苛つきと何故断られたという焦燥感から倉間の声は自然と大きくなっていた。倉間自身、自分はこれほどの声が出せたのかと思えるほどだった。
しかし葵は困ったようにいまだに寂しそうな笑みを浮かべたまま。そして小さく口を開けた。
「私だって、倉間先輩が大好きです。本当に大好き、なんです。」
「だったら、」
「でも駄目なんです。私の気持ちを受け止めてもらっちゃいけないんです。」
ふいに葵は今まで浮かべていた笑みを崩し辛そうな表情を浮かべた。そしてまた駄目なんです、とぽつりと呟き、瞳を伏せた。
「今から言うことは秘密ですよ?私の、大事な人が倉間先輩の事好きなんです。誰だかわかるとは思いますけど…。」
「………。」
「大事な人の幸せを祈るなら、自分は私は諦めなくちゃ。」
「そんなの、お前自身の幸せどうなんだよ…。」
「大事な人の幸せが私の幸せなんです。それに、先輩。私は大事な人の為なら好きな人までも諦めるような女ですよ。倉間先輩が幸せになれる筈がないですもん。」
そんなもの俺とお前には関係がないだろ、お前自身の事も考えろよ、俺の幸せがなんなのかお前は知らないだろ、言いたい言葉はたくさん、たくさん出て来た。しかしそれらを飲み込むしかなかったのは葵の瞳に薄らと涙が滲んでいたからなのか、彼女の幼なじみに対する怒りからなのか。それは倉間にも葵にもわからない。
(私だって、好きな人と居たいんです)(でもそれは不可能で)
崩れる