∴暗いうえに胸くそ悪いです。
∴天→倉→←葵前提天倉
∴誰も報われない。
∴性格悪い。
∴胸くそ悪いので注意。

















「天馬!」

「どうしたんですか、倉間先輩。」

「てめぇ…!」




倉間はぎり、と爪が食い込む程両手に力を込め握り締めた。そんな倉間の手を天馬ちらりと見てはそっと触れ、愛おしそうに撫でた。




「先輩、駄目ですよ、そんなに力を込めたら傷ついちゃいます。」

「っ…!触んな!」




ぱしんと音を立て、倉間は天馬の手を振り解き、きっと彼を睨んだ。天馬は振り解かれた事となぜ睨まれている意味を把握出来ず、不思議そうに首を傾げた。何故こんなにも倉間が怒っているのか。一体何が理由なのか検討もつかなかった。




「なんでそんなに怒ってるんですか?俺、何かしましたっけ?」

「何か…?…てめぇだろ…!空野を追い詰めたのは!」




天馬は一瞬きょとんとした様な表情を浮かべるが、すぐにああ、と思い出したように両手をぱんと合わした。




「先輩、追い詰めたなんて人聞きが悪いですよ!俺は葵と話あったんですよ?」
「だって葵ばっかりずるいんですもん。」
「俺も同じなのに葵だけなんて不公平だ。」
「出会ったのは同じ時なのになんでかな。」




天馬はいつもの笑みを浮かべたまま、いや、笑みを浮かべているのは口元だけと言った方が正しいだろう。目だけはどこか濁っているような、淀んでいるような。そして淡々と言葉を並べて言った。




「俺だって先輩が大好きなんですよ。」
「でも、先輩は葵ばっかり。」
「それでですね、葵と話あったら葵が俺の気持ちわかってくれたんです!」
「私、諦めるよって!」




最後の言葉を耳にした瞬間、倉間は拳を握り締め天馬に殴りかかった。ごっ、と骨と骨がぶつかり合う鈍い音が辺りに響いた。




「ふざけんな…ふざけんなよ!話合いだ…?何が話合いだ!空野の感情を殺した事が話合いだっていうのかよ!」

「痛いなぁ、先輩…。」




天馬は口元に浮かばせていた笑みまでも消し倉間の腕を掴めば、だんっと後ろの壁へと押さえつけた。そしてぎりぎりと手に力を込め、倉間へと顔を近づけた。




「先輩、痛いですよ。本当ひどいなぁ。」

「はな、せ…!」

「嫌ですよ。それとですね、倉間先輩。葵の感情を殺したとか言いましたね?違いますよ。葵の感情を殺したんじゃなくて、」








「最初から感情なんて亡かったことにしたんですよ。」








彼女を返せ
(叫びたかった、返せと)(でももう届かない)




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感情を消されるのは一番の不幸せだと思います。

title by なきこえ



2011.1024


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