誰のせい?
あれからさらに2時間後、城の屋上でルーネスとエレナは2人で夕日を見ていた。


髪はすでに解いていて強めの風にあおられている。


「うわぁ、すっごい綺麗…」


欄干に頬杖をついているエレナは目を輝かせて夕日を見ていた。


「やっぱ高いところから見るのはいいね」


「そういうもんなのか?」


「うん。下から見るのも好きだけど」


それから懐かしむように微笑む。


「まだ、君と夢で逢ってた頃は母様と毎日お城のてっぺんから見てた。それに、サスーン城の時は部屋が西にあったから、窓から見えたし」


「ふ〜ん。好きなんだ」


「日が落ちる時、少し空が紫になるでしょう?」


「あ…確かになるな…」


「それがルーネスの瞳の色みたいで好きなの」


「え?!///」


「なんてね♪」


「…。なんかさ、エレナキャラ変わった?」


「そう?」


悪戯っぽく笑うエレナ。ルーネスは疲れたようにため息を吐いた。


「…前向きになろうって思ったの。君に、もう心配かけたくなかったから」


「だったら、もう勝手にいなくなったりするなよな…」


「む。ちゃんと書置きしてったでしょ!!」


「居場所がわかんなかったら意味ないんだっての!!」


「ちゃんと小鳥送ったでしょ!!」


「でも、場所あやふやだっただろ!?」


「う…」


言い返せず、しょんぼりとするエレナ。


「…ごめん」


ぼそっと不服そうに謝るエレナが可愛く思えてきてルーネスは吹き出した。


「な…なによ!!///」


「いや…かわいいなぁと思って…あはは!!」


「ひ、ひどい!!そんなに笑わなくてもいいでしょ?!」


「ごめん、ごめん!!」


「ばか!!もうルーネスなんか、知らない!!」


とうとうへそを曲げてエレナはそっぽを向く。


「ほんとゴメンって」


手を合わせて謝るルーネス。


「久々にエレナを見たから、なんか嬉しくて」


するとエレナが俯いて呟いた。


「………かった」


「え?」


「逢いたかった。逢いたかったの…何度も君のところに行きそうになった…」


そう言ってそっとルーネスの袖の裾を掴む。


「もう置いていかないで。きっと今度は私我慢、できないから」


空いている手で涙を拭うエレナをルーネスは戸惑いながらもそっと抱きしめる。


「君が私の知らないところで傷ついたりするのは、もう嫌なの。だから…連れてって」


「…うん」


「私は、治癒系の魔法はあんまし上手く使えないけど…練習するから…もう捕まったり迷惑かけたりしないから」


「迷惑なんて…そんなこと言うなよ。なんか他人ごとみたいで寂しいし」


「わかんないの…こんなに好きになった人は初めてだから。君に嫌われたくないんだ」


「絶対嫌いになんかならない」


そう言い切るとエレナの頬を両手でそっと包んだ。


「でも、出来れば今は笑顔が見たいな」


なみだ目で、でもエレナは嬉しそうに笑う。


その瞬間…


「…ごめんもう限界」


「へ?!」


言うが早いか、ルーネスは包んでいた顔を引き寄せてキスをした。


「ん゛っぁ?!!!」


「あ、ごめん」


「ななななにすんの!?(なんか今、唇舐められなかった?!ていうか、口ん中に…?!!!)」


プチパニックに陥るエレナ。


「やっぱ笑ってるのも可愛いんだけど、真っ赤になってるのが一番可愛いよな〜、エレナって」


そんなエレナを見てルーネスは悪戯っぽく笑った。


「何わらってるのよ?!もう知らない!!私戻る!!」


恥ずかしいのかエレナはルーネスから離れようとする。が、またまたがっちり捕まってて逃げられない。


「もう放しっててば!!」


「やだ」


「なっ?!」


何がキャラ変わった?だ!変わったのはルーネスの方じゃないの!!


「俺だって寂しかった」


拗ねたように頬を膨らますルーネスにエレナは何も言えなくなった。


「…俺だって逢いたかったんだ」


そう言ってさらに力を込めて抱きしめられる。


「…苦しい、よ」


「今日だけ、許して」


苦しげな声に少し心が揺らいだ。でも…


「…いやだ」


「ちぇ。けち」


つまらなそうに拘束を解くルーネス。


「私…そういうの恥ずかしいからあんま好きじゃないの」


「なんだよ、自分からキスしてきたくせに」


「黒歴史は掘り返さない!!」


「ひっで黒歴史って…」


「と、とにかく戻るよ!!」


「はいはい…」


伸ばした手を受け取ると2人は手を繋いで歩き出す。


「…好きじゃないって言ったけど…嫌って訳でもないから」


「は?」


エレナがぼそっと真っ赤な顔を俯かせて呟いた。


「だ…から、一気に…そのやって我慢するより、毎日ちょっとずつ…キ、キスとか…した方が、私は好きっていうか…///」


「エレナは毎日キスしたいってこと?」


ルーネスの目がきらっと光る。


「ち…違う!!そんなこと一言も!!」


「え〜。今ながれ的にそんな感じだったじゃんか」


「う…そりゃ、したくないわけじゃないわけでもないっていうか…」


「どっちだよ(笑)。まあ、毎日して欲しいって言うなら喜んでしてあげるけど?」


「やっぱいい!!なんか嫌な予感する!!」


「なんだったら今日みたいに、起こしてやろうか?」


「だからいいって!!ていうか今日何したの?!」


「こうした」


そう言って、ルーネスがエレナの瞼にキスをした。


それから、そのままもう一度唇を重ねる。


「も…やだって言っ…た」


「ごめん忘れた」


「だからやだって…ん゛?!!」


「今日は俺の勝ち」


なんの勝負だ!!ていうかいつ勝負したの私?!


口が塞がってるから突っ込むことは出来なかったけど。


「嫌い…」


やっと離れた瞬間にそう呟く。そしてまた塞がれる。その繰り返し。


「そういうこと言うから、放したくなくなるんだけど?」


「明日はもうずっとレフィアといる。ルーネスなんか知らないから」


「じゃあ、ますます放せないじゃんか」


いい加減戻らないとほんとにみんなに怪しまれる。そう言おうとして、止めた。


どうせ言ったって聞かないだろうし、それに…。


やめたくない。


なんか、ほんとに私キャラ変わったのかもしれない…。


でも、もし変わったんだとしたら…


「君のせいだよ…」


きっとルーネスには聞こえなかった。でも、それでもいい。


とにかく、君とずっと一緒にいられるなら。



瞼に口付け


また、眠ったその時は―…



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終末アリス


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