ラッキーハプニング
それは一瞬の隙だった。


最近は戦闘にも慣れてきて、雑魚モンスターなら一撃で倒せるようになってたのが仇になった。


まさか先手を打たれるとは…


「あぶないルーネス!!」


誰かが叫んだときにはもう遅くて、


頭の中がぐちゃぐちゃになった。







「ルーネス!!ルーネスってば!!」


何度みんなが声をかけてもルーネスは返事をしない。嫌な予感が胸を過る。


ルーネスの背後に敵がいたのに気づいた時にはもう遅くて、彼はなんらかの魔法にかかってしまっていた。


なんの魔法かはまだ確認してないけどこれは多分…。


「どうしちゃったんだルーネス!!」


「駄目!!!」


アルクゥ君がルーネスに近づくのを咄嗟に止めたものの時すでに遅し。


「ルーね…うわあ!!」


ルーネスが槍でアルクゥ君に斬りかかる。間一髪で避けたけど脇を押さえていたからきっと避けきれなかったんだろう。


「な!?なんてことすんのよあんたっ!!」


レフィアが怒鳴り付けてもルーネスは無視して今度はイングズに斬りかかる。


イングズは幸い魔剣士だから剣で弾き返してたけどやっぱり槍相手ではやりにくそうだ。


「ど、どうしちゃったの…?」


「ルーネス多分コンフュにかかったの…混乱してるんだわ…」


コンフュは成功率はあまり高くない魔法だけど、かかったときの厄介さは半端じゃない。


「確か物理的に攻撃すれば目を覚ますはずだけど…」


一番いいのは杖で殴ることだけどアルクゥ君は怪我しちゃって早く手当てしなきゃだし、レフィアじゃ多分ルーネスまで届かない。イングズだとルーネスまで怪我しちゃうし…。


「どうしよう…」


おまけにコンフュをかけたモンスターも襲ってくる。こんな状態じゃ仮にイングズに頼んでも無理だろう。


色々悩んでると、操られたルーネスと目があった。


彼の目には光が無くて思わず鳥肌が立つ。


「るー、ねす」


恐る恐る名前を呼ぶとじりじりと近づいてきた足が止まった。


「ルーネス」


今度ははっきりとルーネスの瞳が揺れる。


―聞こえてるんだ!!


後ろのみんなに目配せすると、イングズが頷いてモンスターを退治し始めた。


それを見てイングズを襲おうとしたルーネスの手に触れる。


「ルーネス!!!」


槍を私に振るおうとした手が止まった。今度は手を伸ばしてルーネスの頬に触れる。


いつだったか、リコと話していた呪いを解く方法。


―ねぇほんとにキスで魔法って解けると思う?


─愛があればねー。エレナクラスのお姫様ならいけるんじゃない?


―ほんとかなぁ…?


あの時は半信半疑だったけど今はそうも言ってられないから。


覚悟を決めると背伸びをしてルーネスにキスをした。


「…っ!?」


ぱちん、と何かが弾けた音。


それを確認してからゆっくり唇を離すと呆けた顔のルーネスと目が合った。


「エレナ…?」


どうやら意識が戻ったらしい。ほっとして思わず抱きついてしまった。


「うわっ!??」


「よかったぁ…」


しかもキスしたことは覚えてないみたいだし。


不幸中の幸いだと思ってたら後ろで咳払いをする声が聞こえた。


「ほんっとラブラブなことで」


ねぇ?とイングズに目配せするレフィア。イングズは気絶してしまったアルクゥ君を背負っいながら頷いた。


「アルクゥ?!」


「…ほんとに覚えてないんだな」


「俺…」


「コンフュにかかったの。ルーネスのせいじゃないわ」


暗い顔をしたルーネスに慌ててそう言うと、レフィアに頭を軽く叩かれる。


「もーエレナはルーネスには甘いから!!」


「だ、だって…!!」


レフィアに反論しようとしたとき、イングズがぼそっと呟いた。


「甘くなきゃ、あんな無茶なことしないだろ」


「ななななに言って?!」


「…あんな無茶?」


ルーネスの前でそのワードはアウトだって知ってて言ったな…。イングズめ…。


案の定ルーネスが怖い顔で私を問い詰め始める。


「またなんかしたのか!?」


「ち、違うの!!そういうのじゃなくて…」


「そういうのじゃないってどういうことだよ?」


「だからルーネスが言ってる類いのことじゃなくて…」


しどろもどろになる私をレフィアとイングズはにやにやと見ている。


きっと二人を睨み付けたものの彼らは涼しい顔でさっさと先に行ってしまった。


「俺が言ってるようなのじゃなくても無茶したんだな?」


「無茶って言うか…」


ついに何も言えなくなって俯いてしまう。


「なぁ、どうやってコンフュ解いたんだ?」


ほんとにルーネスが心配してるのはわかる。わかるんだけど…。


「…言いたくない」


「エレナ!!」


「わかった!!わかったわよ!!」


「え?!」


「こうしたの!!」


ルーネスの顔を思いっきり引き寄せてぶつけるようにキスをした。


「っ…!?」


「わかった?!」


半ば逆ギレでそう言って体を離すと走ってレフィア達のところまで行く。


恥ずかしくてとてもじゃないけどルーネスの方は振り替えれなかった。



なりゆきでございます
だって傷つけたくなかったんだもの


(「こっ…こうした…って!?」)
(「残念ねぇ。せっかく大好きなお姫様の魔法のキスだったのに覚えてないなんて」)
(「ま、俺たちがしっかり見てたから安心しろ」)
(「は?!いや意味わかんないから!!てかやっぱき…」)
(「もう煩い!!煩い!!煩い!!」)



コンフュネタやりたかったんですよね。

お題サイト様↓
魔女のおはなし


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