「持田さんの手って冷たいっすよね」
からめていた右手をまじまじと見つめながら椿がぼそりと呟いた。
初めのうちは持田が街中で手を繋ごうとするたびに報道されたらや誰かに見られたらなんて持田にとっては別にいらない心配をしていた椿だったがいくら心配したところで結局自分の右手の自由はきかなくなるということに最近ようやく気がついた。
「…そう?」
あまり興味なさそうに持田が繋いでいる左手の指で椿の手の甲をゆっくり撫でるとくすぐったそうに右手をひいた
「はは、本当に感度いいよね椿くん」
「っ…。」
どうしたらそこまでウブになるのか本当に疑問に思うほど椿は無知だしすぐに顔を赤くするが持田にとってはそういうところも面白くてたまらない。
顔、真っ赤なんだろうな。なんて見なくてもわかることを考えながら椿の顔を見つめると思ったとおり真っ赤な顔でよけいに可笑しく感じた。
「椿くんってさぁ本当にいつもいつも期待を裏切らないよね」
「なっ…何がっスか」
「色々、で?なんだっけ俺の手が、つめたいんだっけ?」
気分をよくした持田が先ほどの椿の発言について自分からといかけて、おまけにもう一度手の甲を撫でると椿の身体が大きくびくついて自然と持田の口からははっと笑いがこぼれた
「手冷たいって何?離したいの?」
まぁ離さないけどね、そんなこと口にだしては言わないがどうやら椿には持田の考えてることが通じたようで首を横にふりながら持田の手を強く握った
「ち…ちがくって…その…てっ…手冷たい人って心が優しいっていうじゃないっすか」
珍しく一瞬持田の目が驚いたかのように丸くなったかと思えば大声で「うけるー」と笑いだしいきなりのことで椿はあたふたとすることしか出来なかった
「…仮にさ、俺が優しいとしたら椿くんは心が冷たいの?手、暖かいけど」
見せつけるように握っていた手を上にあげると椿が「そんなこと」と首をふった為「自分で優しいとか言っちゃうんだ」と持田が再度からかうと困ったように椿が持田の顔をみつめた
「ハハ、冗談。まずその話あってないよ」
「もっ持田さんは優しいです」
持田の発言も聞かずに椿が否定をするとまた持田が大声で笑いだした。
「本当あってない」
だって椿くんは…まぁ言わなくてもいいかなんて自己解決をした持田が暖かい椿の手の甲を優しくなでた。