「あとどんくらいかかんの?」

見慣れていた高層ビルの景色が一面の田んぼに変わった時窓の景色を眺めていた赤崎が呟くと向かい側にペットボトルの蓋をあけしめして遊んでいた椿がその動きをやめて少し考え込んだ。

「この電車があと一時間くらいで…乗り換えて、バスのって…二時間ちょっと…ですかね」
「けっこうかかんのな」
「す…すいません」
「いやなんで謝るんだよ」

もともと椿の里帰りについていきたいと言ったのは赤崎だった。勿論離れたくない気持ちもあったがただ単に自分の知らない椿に興味があった、椿が連絡をとると椿の親は大介が東京から友達を〜なんて喜んでいたらしく小さい頃から人付き合いが苦手だったってことだけは理解できた。

本来なら新幹線や飛行機で近場(と言ってもやはり距離はあるが)の大きい駅まででてしまうのが手っ取り早いのだが椿が帰省するさいはほとんどの場合ローカル線をつかいゆっくりと帰省すると聞き、それならと赤崎もローカル線で行くことを選んだ

「…やっぱり…時間も、かかりますし」
「俺がこれがいいって言ったんだし」

申し訳なさそうに謝る椿に赤崎が目線は一切かえずにフォローをいれた。
もともと景色を眺めていること自体は嫌いじゃない…嫌いじゃない…が、赤崎が目の前に座る椿の足に自分の足をからめた

「…っ」

あまり広くない座席は大人二人が向かいあわせに座れば膝があたってしまうほどの距離、ひとつ前の駅でほとんどの人が降りていき車両には赤崎達しかいなかった。
それをいいことに赤崎は目線も変えずに自分の爪先で椿のふくろはぎを撫でてみたり足をからめさせたり、その度に椿の身体がびくっと上下にうごくため赤崎は楽しそうに何度も何度も続けた。

「ザキさ…ん…人…来た…ら」
「来ねーよ」

一面田んぼの景色に山がくわわっても飽きもせずに椿で遊ぶ赤崎に椿の顔はどんどん赤くなっていった

「…ザ…ッ…ザキ…さ…」
「なに?したくなった?」

ようやく椿のほうを向いた赤崎がにんまりと口角を上にあげながら笑うと椿がこれ以上ないほど顔をあかくした。

「…っ…そっ…そんなこと」

にやにや笑う赤崎に反撃といわんばかりに椿が一度足を軽く蹴ってやるとぐいっといきなり身体を前に倒されてそのまま赤崎の腕の中におさまる形になった

「な…っ…」

赤崎が一度強くだきしめるとふっと椿のことを自分の身体から離す。珍しい行動に椿が思わず顔をみると目尻を赤くした赤崎がいた。

「……失敗したわ」
「え…?」
「お前の家にいったら……こういうこと何もできねーじゃん」

知りたいと思ったし離れたくないとも思った、が、生き地獄だということに気づいた赤崎が少し後悔をしていると顔をキョトンとさせた椿がくちをひらいた。

「そうなんすか?」
「…そうなんすかって…お前…大の男同士の友達が親のいるとこでいちゃついてたらおかしいだろ…」
「あ、い…いや、それはそうなんすけど…だって俺恋人連れていくっていいましたよ?」

椿の発言に思わず赤崎が目をみひらいた

「…は?」
「え?」
「…友達っていったんじゃねーの?」
「え、俺そんなこといいましたっけ?」

赤崎の頭の中が少し混乱した。

「男って…ことは?」
「?、いってないっす、ただ恋人って」

素でやっているから怖い。

椿の親の反応を想像して生き地獄のほうがまだましだったかもと後悔をした赤崎だった
























「母さん、ザキさん」
「…どうも」
満面の笑みで俺を紹介する椿を迎えにきた椿の母親は驚いたように目をまるくした
そりゃあそうだ、なんて他人事のように思い込もうとしたが内心は心臓がいまにもとびだしそうだった。
「…ご飯」
「え?」
「はりきりすぎて多くつくりすぎたかなって思ったんだけどこれなら余らなそうね」にっこり笑う椿の母親に思わず驚くと俺のほうをみて再度笑った
「ザキくん…だっけ?家にきたら大介の昔の写真とかみせてあげるわね…だから、色々聞かせてください。今の大介のこと」
内心は複雑なんだろうけど、平気そうに笑う椿の母親に感謝しながら一度頭をさげた。

















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テーマ「人外ファンタジー」
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