夏の気温ですっかりぬるくなってしまった麦茶に氷をたすとカランといい音がした。
何が楽しいのかいれられた氷を椿がじっと眺めていた
「麦茶って家によって味違いますよね」
「それは俺ん家のが不味いって言いたいわけ?」
そんなわけない。と言いたげに椿が全力で首を横にふった
冗談。と頭に一度手をおくと安心したのか肩の力を少しぬいた
「俺ん家のって氷で薄くなるからって母親がいつも濃く作ってて」
「うすいか?」
麦茶を足してやろうとすると椿が首を横にふりながらコップを俺から遠ざけた
「ザキさんのは氷足しても薄くならないっす」
あぁだからさっき氷を眺めてたのかと妙に納得した。
飲みなれた麦茶にくちをつける小さい頃からのんでた変わらない味。
ふっとある思いが頭をよぎる
「こんど」
「え?」
「その麦茶飲みにいっていいか?」
お前の実家。とつけ足すと椿の顔がみるみる赤くなる
え、あ。なんてあたふたしながら持っていた麦茶を一気に飲みほしてテーブルへとおいた
「も…勿論です」
笑った椿にキスをすると飲みなれた麦茶の味がしてそれがなんだか可笑しかった。