手をのばしたら届く距離にいるはずなのに何故だか俺の前に歩いているザキさんは本当に遠くにいるような気がして、さっきから高くなっている自分の心臓は左右に2つあるんじゃないかという錯覚さえ覚えさせた。
「…つばき?」
ふいにザキさんが俺の方をむいてばっちりと目があってしまった。
うまく言葉がでなくって辛うじてでてくる声は「え、あ」なんて母音ばかりで自分自身に少し呆れた。
「ザ…ザキさんっ」
あぁよかった。ちゃんと言えた。なんて安心しても結局すぐに次の言葉がでなくってまた母音ばかりになってしまう。
うまく言いたいことは言えなくて、それでもやっぱり伝えなきゃいけないこともある…一度深呼吸をして、もうどうにでもなれ、なんて覚悟を決めてザキさんを抱きしめた。
「…え?」
一瞬何が起こったのかわからなくなったザキさんの身体は少しかたまっていて、ザキさんも普段俺に対してこう思ってるのかな、なんて頭の片隅で必死に考えた。
心臓の音はさっきよりうるさくて抱きしめたザキさんの音が聞こえてるみたいでそれがなんだか嬉しくってフッと抱きしめていた力を弱めるとザキさんが少し顔をずらした為に目があった。
「つばき、どうした?」
ザキさんの表情はいつもと変わってないけれど心なしかいつもより優しい気がした。ふっと目を閉じて唇をあわせた。
心臓の音がうるさくって何も考えられないでいるといつのまにか背中にまわっていたザキさんの片腕が俺のことを強くだきしめてもう片方の腕で頭をおさえられた為そのまま深くキスをする形になった。
いきなりのことに頭はいっぱいいっぱいで更に口内に無理矢理はいってきたザキさんの舌のせいでうまく呼吸ができなかった。身体の中の酸素が薄れてきたのか頭がぼーっとして何も考えられなくってザキさんの舌の動きにあわせることさえも疎かになってきていた。
ふいに唇が離れてゆっくりと目を開けると珍しく顔が赤いザキさんがぼんやりした頭でも認識できた。
「…っんとに、どうしたんだよ」
呆れているとかそういう訳ではなくってなんだか心配しているかのようにザキさんが俺に問いかけてきた。
うまくできない呼吸のせいか先ほどのキスのせいなのか大きく鳴り響く心臓の音とふわふわしてる頭で言葉をつむぐ
「ザキさん…に…触り…たくって」
言っちゃった。という後悔よりも言えた。という喜びのほうが幾分勝っていて自然と笑みがこぼれたのが自分でもわかった。
ザキさんは少し恥ずかしそうに俺の顔をみたりキョロキョロしたりしてて、普段見れないような表情で小さく「ばーか」と言われたけどそれも何だか可笑しかった。
「…俺だってそうだっつーの」
ザキさんに強く抱きしめられながらもう一度キスをした。
バキザキディということで
つばきに頑張ってもらいました
でも結局ザキバキです
あくまで攻めの姿勢だけです