「お前って俺のこと好きなの?」
「え?」
隣に座っていた監督がいきなりそんなことを言うもんだからもう少しでクリアー出来そうだったゲームは見事にゲームオーバーになってしまった。
「っ…な、監督…なんでいきなり」
「なんとなく?」
いつもと変わらない態度で俺の髪の先をいじる監督の口角は少しあがっていて何だかそれがやけに恥ずかしかった。
「…す…好きっすよ」
じゃなきゃ一緒にいないっす。なんて伝えるのは流石に恥ずかしくって思わず顔をそむけると監督は俺の髪をいじりながらふーんと呟いた
「つばき」
「な…なんすか?」
「それじゃわかんない」
監督の言葉に思わずバッと監督の方を向くとさっきよりもわかりやすく口角があがっていて何だか嫌な予感がした
「…ど、どういう…意味っすか?」
「ん?態度でしめしてよ」
態度で、と言われてもいまいちピンと来なくって監督の顔を見ているとにひっと笑ったと思ったらいきなり目の前に監督の顔があって直ぐに元の位置に戻っていった。
にひーっとイタズラをした子どもみたいに監督が笑ったけど内容はイタズラとかそういったレベルじゃなくって、とにかく自分の顔が熱くてどうしていいかわからなくなっていた
「…え…あ…そ…」
「こういう意味…って椿!?え、ちょ…つばきちゃー…」
目をひらくとあたりは真っ暗だった。
自分の身体が横になっていて真正面には寝ているのか目を瞑っている監督がいた
どうやら気絶か何かしらをしてしまったらしく監督がベッドまで運んでくれたんだろうと解釈した。
態度でしめす。
確かにいっつも恥ずかしい気持ちが勝ってしまっていてあんまり気持ちを言葉にだすことはない。それに…キスも監督からしてくれて尚且つまだ4、5回くらいしかしたことがない。
監督のことは本当に好きで頭の中が監督のことしか考えられなくなるときだってある。それでも自分の気持ちをうまく伝えることはやっぱり出来なかった。
目をとじている監督の顔をじっとみる。
長めの睫毛も綺麗な髪の色も俺の名前を呼ぶ声も子どもみたいに笑う口も、俺のことを見ていてくれる瞳も…全部本当に好きで仕方がなくってこんな気持ちになったのは初めてだった。
「好き…です」
ゆっくりと言葉を紡いだあと
監督の唇にキスをした。
夢の中まで届けばいい