「キスしたい。」
目の前にいた恋人がいきなりそんなことをいいだすものだから思わず食べていたプリンを椿は落としそうになった。
「え、え、え…?」
「駄目?」
子供みたいな表情を浮かべる達海を見て駄目とは言い難い。…けれど
「……っす」
「へ?」
「俺、したことないっす…キス」
顔を真っ赤にした椿がごにょごにょと喋るのを達海は聞き逃さなかった。
椿と恋人になってそろそろ1ヶ月くらいがたつと思う、いつ付き合ったとかは相手が椿なだけにイマイチ曖昧で気づいたら、と言うのが正しいのかも知れない。
手を繋いだり一応恋人らしいことはしてきたがそれ以上を達海はしなかったし椿もしようとはしなかった。けれど嬉しそうにプリンを食べる椿を見てついに思っていたことを口にしたのだが…手を繋いだだけで真っ赤になる椿を見て奥手だとは前々から思ってはいたがまさか初めてだとは予想外だった。
これは面白い。達海が意地悪な笑顔を浮かべた
「じゃあいいや」
「え?」
相変わらず真っ赤な顔をした椿が眉毛をさげながら達海の顔を見つめた。
「椿の初めてを俺がもらうのも悪いし?」
なるべくいつも通りの表情をしているつもりだけどもしかしたら少しにやけているかもしれない。さりげなく達海が口元を隠す
「…あ…い、いや」
椿が首を大きく横にふった
「わっ…悪くないっす」
椿のその言葉に達海がにひーっと笑った
「どういう意味?つばき」
しまった。という顔をした椿が更に顔を赤くさせ目を泳がせながらあの…やら、その…やらごにょごにょと喋っているのを見て達海がとどめをさした。
「教えて」
覚悟を決めたのか椿が一度深呼吸をした。
「か…監督と…キッ…キスしたい…れす」
合格。最後の最後に噛むとこも椿らしい。
「目、閉じて」
ぎゅっと思いっきり瞼を瞑る椿を見て達海が少し苦笑いをしながらおでこにキスをした
達海の唇が離れると椿があれ?といった顔を浮かべた。
「今日はここまでにしといてやるよ」
お楽しみはちょっとずつにしないとね、心の中でこれからのことを楽しみにしながら達海が椿の頭を撫でた。
















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