空はもう暗くなっていたけれど落ち着かなくってまだ俺はボールを蹴り続けていた。蹴ったボールがまるでレールの上を進んでるかのように綺麗にはいる、その瞬間が本当に好きだった。
「よしっ」無意識にでたガッツポーズ、ゴール近くに転がってるボールを拾いにいこうとした時に「つばき」と声をかけられ
た。こんな時間にここにいる人なんて限られているしこういったことは何度も経験してる。ゆっくりと後ろをむくと案の定監督がたっていて「あ、今日は反応うすいね」なんて少し残念そうな口調で言われた。
駆け足でボールをとって「俺向こう行きますよ」と声をかけると何とも言えない顔をされたもんだから少し焦っていると「椿ぃパス!」監督が声をはりあげて俺に言ってきた。
今までそんなこと言われたことがない。
ボールを地面において監督にむかって蹴った。つもりだったけど見事に空振り「ちょっと椿ー。これが試合だったらどうすんのー」なんていつも通りの口調で監督に起こられた。
一度深呼吸をしてもう一度監督にむかってボールを蹴るとベストとは言えないけどゆっくりと思い描いたラインでボールが監督へと転がっていった。「ないす」監督がボールを俺に返すと綺麗に俺の足元に転がってきた「なにやってんの椿、ほらボール」監督の言葉で我にかえりもう一度監督にボールをける。今度はすこし手前でとまってしまったけど監督は無言で俺にボールを返す。また綺麗に足元に転がってきたボールを監督に渡すと「兄弟みたいだな」なんて笑われた。
しばらくするとお互い話さなくなって聞こえるのはボールの音だけで飽きもせずに何度も何度もボールを蹴っては受け取り、受け取りは蹴っての繰り返し。
もう空は真っ暗で明かりもつけないでボールを蹴り続ける…わかるわけないのに10mほど先にいる監督の顔が笑っているような気がした。

「はい。おしまい」

俺が蹴ったボールを手でもちあげる。なんだか久しぶりに、それこそ何十年ぶりに監督の声を聞いたような錯覚に陥った
監督が選手だったときのことはよく知らない。だからあの時監督になにがあったかなんて勿論しらない、けれどひとつわかったのは…
「あ、あの」
「ん?」
「ありがとうございました。達海さん」
「……どういたしまして」

サッカーが本当に好きだってこと。

















タツ+バキ
×も好きですが+もいい(;_;)!

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