久しぶりのチーム全体で開かれた飲み会。人数の関係で居酒屋全体を貸しきった飲み会に選手達のテンションは初めから高かった
「おーい」
焼酎のボトルを片手に石神と丹波が椿達が飲んでいる席に近づいてきた。それに気付いた他の選手達はそそくさと他の席に移動していく……残されたのは椿と宮野のみになった
「あれー椿と宮野だけなの?まぁいいや飲もうぜー」
もう既にかなりの量を飲んでいるのだろうか、いつにもましてテンションの高い丹波が椿達と向かいあうような形で座敷に座り焼酎の蓋をあけた。
「二人とも強いの?」
にやにや笑いながら石神が訪ねると宮野は見ての通りです。とウーロン茶のジョッキを二人に見せた。
「えー宮野のめないの?椿、お前は?」
二人とも飲めない奴に無理矢理酒を飲ませることはしたくないらしく二人のターゲットは椿に絞られた。
「俺っスか?……まぁ一応のめなくは…」
話の途中で椿の目の前にグラスになみなみとつがれた焼酎がおかれた。
宮野も乾杯だけは、と石神がグラスに少しだけいれた焼酎を宮野に手渡す。
「じゃあかんぱーい」
丹波の陽気な声で半強制的な飲みが始まった。周りのメンバーは椿に申し訳ないと思いながらもその状況を楽しんではいた。
石神は酒に強い。強さはチーム内1と言っても過言ではない。丹波もテンションが更に高くはなるが意識はしっかりあり石神同様酒には強い。だからこそ毎度毎度チーム内の誰かを標的にして相手がつぶれるまで飲ませている。勿論チーム内の飲みが初めてな二人はそんなこと知るよしもない。
30分くらいたちボトルは既に二本目に突入していた。
「お前結構イケる口?」
石神が椿のグラスに焼酎を注ぐ
「…あ…すみません。」
急いでグラスを持ち注がれていく焼酎を見つめる椿。その横で宮野が不安そうにウーロン茶を飲んでいると遠くのほうから世良の声が聞こえた
「さっ……堺さーん」
店の端から端まで届きそうな声に椿達の視線も声のした方へと自然といく。そこには机に突っ伏している堺とアタフタとしている世良がいた。
「堺さんがーっ」
いきなりのことにパニックに陥ってる世良を見た宮野が立ち上がった
「ごめん椿行ってくる」
世良もそうとう飲んでいるのだろう。椿のことは心配だが堺は潰れているわけだし肝心の世良は正常な判断ができないと思った宮野が世良の元へ駆け寄っていった。
「堺弱いんだよなー」
にやにや笑いながら丹波が飲み続ける
「顔真っ赤でなー」
なにか思い出したのか石神もにやにやと笑いながら自らのグラスに焼酎を注いだ。
その瞬間バタンといい音が机から聞こえ目の前には机に突っ伏した丹波
「あ、やべ忘れてた」
石神が見慣れた様子で丹波のことをみつめる椿はどうしていいかわからずにアタフタと丹波のことを見ていた
「こいつ急に潰れるんだよね」
間に水とか飲ませると大丈夫なんだけどね。と言いながら平然と飲み続ける石神。きっと何度か体験したことがあるのだろう
「……やっぱり」
ふと椿の頭の上から声が聞こえた。椿が上を見ると片手にジョッキを持った堀田が椿の後ろにたっていた
「あ、堀田。ちょうどいいや、はい丹波」
やはりいつものことなのか、堀田が丹波のことをゆっくり起こし手にしていたジョッキを差し出すと丹波がぐびぐびと中身をのんでいく。
「ったく、ちゃんと水飲むように言ったじゃないっすか」
丹波が空になったジョッキをテーブルへ置いて「んー」と首を一度縦にふると堀田へと寄りかかった。
「ったく……ガミさん。タンさんあれなんで向こう連れていきますからね」
慣れた手つきで堀田が丹波を自分が飲んでいた場所の方まで運んでいった。
「いやーとうとう二人だね椿」
にやにやと石神が笑う。
「……ウス」
「そんな顔すんなよー。別にとって食ったりしないからさ、」
ばんばんと椿の肩を叩きながら石神が焼酎の蓋をあけ椿のグラスに注ぐと椿もボトルを受け取り石神のグラスに焼酎を注いだ。
椿が注がれた焼酎に口をつけるとまた後ろから声が聞こえた。
「なにやってるんスか」
今度は誰の声だかすぐにわかった
「おー何してたんだよ」
まぁ座れ。と石神が手を上下に振り示すと赤崎が椿の横に座った
「俺、車なんで堺さんと世良さん送ってきたんスよ。」
「あれ?じゃあ赤崎のめねーの?」
石神が赤崎に渡す気だったグラスを引っ込めた
「いや、ついでに車も置いてきました。俺ん家こっから歩いていける距離なんで」
「なら良かったわ」
そう言って石神がグラスを手渡すと赤崎が「どうも」と受け取った。
「赤崎も結構イケる口だったよな」
「そうッスね」
「よしバンバン飲もうぜ」
石神が景気よくグラスの焼酎を一気に飲み干した。
「あ」
赤崎が急に声をあげる
「どうしたよ」
「そう言えば清川さんなんスけど、なんか今石浜さんがこっち来てるから迎えにいってくるとかなんとか言ってさっき店でましたね」
「え」
石神の顔が険しくなった
「赤崎、それいつだよ」
「……ほんと今さっきッスね」
赤崎の言葉に石神が無言で立ち上がり一目散に店の入口へと駆け出して行った。
椿がようやく解放されたと安堵の顔を浮かべると赤崎がテーブルに置いてあった水を椿に差し出した
「あ、ありがとう…ございます」
素直に水を受け取り飲み干した。
「……お前何杯くらいのんだ?」
「え?……えっと……ボトル三本目で全部ストレートで飲んでるんで…えっと」
赤崎にはその言葉だけで充分だった。
「よし、」
「え?」
「こないだは俺が先に潰れたからな、今度こそ潰してやるよ」
にやにやと笑う口元は先程まで居た石神と同じように感じた。
まだまだ夜は始まったばかりだった。









旧拍手文でした^^ !
ながいですが一応つづきます!


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -