「後藤腹減った」
溜まっていた仕事も一段落がつき後藤が家路につこうと帰り支度を始めた時だった。いつから居たのだろうか達海が声をかけてきた。
確かにここ最近立て込んでいてまともに食事もとっていなかった、達海も達海で練習が終わると部屋にこもり食事もジャンクフードだかりの生活だったはずだ。
「飯、いくか」
後藤が達海に声をかけた
飯といっても向かうはチェーン店の居酒屋だったりする。しかし今の二人には充分過ぎるほどの栄養補給だった。
「達海、野菜も食べろ」
後藤が取り分けたサラダの皿を達海に手渡した。
「え―…」
しぶしぶ達海がうけとりサラダのはいった皿を箸でいじり器用に菜と細かくなった鶏肉をわけだした。
「え―、じゃない…って言ってるそばから野菜よけるんじゃない」
「だって―。」
後藤は深いため息をついた
「…あ、ね―後藤」
少し真面目な声で達海が口をあけた
「あ―んして」
意外、でも達海らしいといえば達海らしい発言だった。
「は?」
しかし流石の後藤も拍子抜け
「だ―か―ら―、野菜。後藤があ―んってしてくれたら食べる」
子供みたいなでもしっかりと自分の意思をもっているような、後藤はそんな達海の顔に弱かった。
「……今回だけだぞ」
「あ、トマトはやだ」
「知ってる。…食べるんだろ?」
にやりと後藤が笑った
「…いじわる―い」
「お前ほどじゃないよ。まず第一これ、やってる方も恥ずかしいんだからな?」
苦笑いしながら達海の口元に箸でつまんだトマトを差し出す。
「俺は別に恥ずかしくないし。」
そう言うとあ―んと大きい口をあけ目の前のトマトを食べだした。
「よくできました。」
まるで小さい子を褒めるように、それがごく当たり前のように後藤が達海を褒めた
当の本人は眉間にシワをよせながら無理矢理手元の生ビールでトマトを流し込んでいた。
「後藤ってさぁ」
ジョッキをテーブルに置き達海が口をひらいた
「ん?」
「結婚しないの?」
唐突に直球すぎる質問
「達海酔ってるか?」
「んなわけないじゃん」
「なんでいきなり」
「いや?別に、なんとなくだよ。後藤もいい歳だしね―そろそろやっぱあれなのかな―って思ったわけ」
淡々と達海が言った
「達海」
「なに?」
「俺が好きなのは」
「知ってる」
あの当時何度も何度も繰り返した言葉、今更言われなくったって達海にはわかっていた。……だから余計に辛かった。
「達海」
なんだよ
「ごめん」
なんで謝るんだよ
「ごめんな…達海。」

…なんで俺ないてんだよ

「達海、俺はさ、お前がいればいいから、俺だけはお前から離れないから」
そういって後藤が達海の涙を拭った
本当にこいつはなんで恥ずかしいことをすらすら言えるんだよ、俺のが恥ずかしいんだけどなんて達海は考える
それでも結局はそんなところも含めて後藤のことが好きになったんだなと、アルコールのせいか少し熱くなった顔を手でおさえながら目の前の後藤をみつめていた










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