群がるハイエナ

テーブルに、翠が腕を奮った料理が並べられていく。
湯気の立つ食事を見て、普段質素な食生活の面々は揃って目を輝かせた。

「あけましておめでとう。おせち、食べてね」

そう翠が号令をかけるやいなや、皆それぞれ好きなものをつつき始めた。

「このおせち、昨日コルトちゃんと作ったの」

翠は頬に手を当て言った。
するとローストビーフを頬張っていた彰がすぐさま茶化す。

「キノコルトちゃん?菌類だったのか」
「キノコルトちゃん」
「違う!どう見ても人類でしょうが!」

彰に続き啓司にもからかわれたコルトは素早く突っ込む。
こういったやりとりはいつものことであった。

口を尖らせながら、栗金団を取り皿に盛るコルトを横目に、彰はぼそりと言った。

「いつも笑ってるからワライダケの影響だな」
「あたしの微笑みを薬物によるものだと思わないでよ!」


先ほどまで口いっぱいに詰め込んだものを嚥下した啓司は、翠を見てしみじみと告げた。

「さすが翠さん。おいしいです…って言っても俺、こういうちゃんとしたおせち料理って初めて食いました」

「ありがとう。初めてなら、多少間違えててもわからなくて助かるわ。ふふ」
「毒入れてても気づかなそうだしね」
「ふふ」
「ええ!?入ってんスか!狙われてる!?」

敦夜の横槍にも表情を変えない翠に、酷く恐怖する啓司だった。
それに微笑しながら、翠は全体を見回し声をかけた。

「ナルヤくんはどうかしら?苦手なものとかない?」
「大丈夫です。おいしいです」
「やっぱり翠姉の料理は絶品だよねー」

にこにこと出汁巻き卵をかじる敦夜を見、呆れたように彰が言った。

「そうやって偉そうにいうお前は何も手伝ってないのな」
「失礼な。きっちり掃除とかしたよ」
「料理は?」
「…………1ヶ月くらい前に…なんか、したよ」
「……今年の抱負決まったな」
「…うるさい…」

「あっあたしも料理教えて欲しいです。いろいろやってみたいし」

静かに睨み合う彰と敦夜を取り繕うように、コルトが言った。
タイミングは気を使ったが、発言の内容は本心からのものだった。

「ええ。もちろん」

そう、にっこりと翠は笑うのだった。





食後、それぞれが自分の部屋へ戻り、また翠はキッチンへ洗い物に消えた。
残るは席から離れなかったナルヤと、彼を待ちながらお茶を飲んでいた敦夜だけだった。

「はーお腹いっぱい。部屋戻ろ、ナルヤくん」
「…………」
「……むー正月らしくダラダラゴロゴロな自堕落しようよ」
「…………」
「……じゃあ姫始めならぬナルヤ始めだよ。気合い入れて行こう」
「…………」
「……僕にお年玉は?」
「…………」
「……キャッシュ一括払いじゃなくても、ローンでもOKだから」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ねー」
「…………ふう。俺、数の子全部噛み潰さなきゃ気が済まないから」
「キモッ」



 



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