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 晴れときどき海賊狩り

「お金が、ない……!」

この世の終わりだとばかりに暗い表情で頭を抱える彼女は革命軍の財布を一手に引き受けており、参謀総長の恋人でもある。
革命軍はなにかと物入りだ。メンバーはもちろんのこと、保護した民間人の食事や生活の必需品などお金がいくらあっても足りやしない。そんな中なんとか切り詰めてここまでどうにかやりくりしていたが、今回ばかりは八方ふさがりのようだ。
そんな彼女の様子を見たサボは、ひっそりと本拠地を出た。



青く澄んだ空。穏やかな波。
お昼寝日和の天候に、荒くれ者の海賊たちの気も緩む。男たちは忘れていた。自分たちが追われる立場だということを。
まず最初に異変に気付いたのは見張りの男だった。狙われた、と言ってもいい。カエルの潰れたような声を残して気を失う。そのまま侵入者は甲板へ降り立ち、手元の手配書と周囲の顔を見比べる。そのときようやく海賊たちは侵入者に気づき、男を囲んだ。

「お、お前、だれだ!」
「おいジョンがやられてるぞ」
「金髪にゴーグル……もしかしてコイツ、噂の──」

海賊狩り。そう続いたのを聞いて、渦中の男は困ったように頬をかいた。

「噂になってンのか……。まぁバレなきゃいいか」

誰に言うでもなく呟くと模造刀を抜く。

「そういうことだ。大人しくしてりゃ痛くはしねェよ」

海賊たちは最初こそ怯んだものの、相手は一人。しかも武器は模造刀の事実に強気になっていく。ここまでお尋ね者として海に名をはせた自信が強気にさせる。勝てる、いや敗けるはずがない。ニヤニヤと笑みを浮かべてにじり寄っていく。

「まぁそうなるよな。最近肩透かしばっかだったから少しは骨があるやつがいるといいが」

息を吐いて口を引き締めると海賊たちの壁に身を投じる。
悲鳴。悲鳴。悲鳴。
囲っていたはずが一人、また一人と倒れていく。一人残らず意識を刈り取ったことを確認すると、男はゆっくりとズボンの埃を払って立ち上がった。

「あー……また航海士残しておくの忘れてた」




「ほら、これで少しは足しになるか?」
「え、こんな大金どうしたの?」
「んー、ちょっと財布を届けたら礼に、な」
「そうなんだ。サボは優しいね」

久しぶりに見る彼女の笑顔をしばらく眺めて、邪魔しないように部屋を出れば仲間の冷ややかな眼差し。

「この間は荷物運び、今回は財布を届けて……よくもまぁお金持ちのトラブルに遭遇するね」
「まだサボだとはバレてないが噂になっているぞ」
「わかってる、わかってる。今回で終わりだから」

顔を顰めて耳を塞げば「なにもわかってない!」とコアラが憤慨する。

「前回もそう言ってたよね?もうあの子にカッコつけたいからって無茶するのやめてよ」

怒り心頭なコアラを宥めるハックをよそに、彼女の笑顔を思い出してまた頬が緩んだ。



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