Main(本) | ナノ
 内緒の味

くぅ、とお腹が控えめに、それでいて確実に主張する。無視して寝ようかと思ったけど今度はさっきより大きな音で急かしてくる。
ため息を一つついて布団から這い出る。夜中に食べるのはよくないけどこれは仕方ない。よしよし、とお腹をなだめながら食堂へ向かえばぼんやりとした灯りに浮かぶ人影が一つ。

「お、腹減ったのか?」
「サボも?」
「まあな。名前も食うか?」

ひらひらとはためく袋入りのラーメンはまるで救世主がなびかせる旗のようで。なにか言う前にお腹が返事をすると、サボは「待ってろ」と笑う。
椅子に腰かけて足をバタつかせる。なんだか少し、浮かれているみたいだ。
数分待てば目の前に置かれるどんぶり。チャーシューまで乗っていて、贅沢。じゃなくて、

「これ、あとで怒られない?」

袋入り麺だけならまだしも、チャーシューはだめな気がする。この前「肉の在庫がギリギリ」なんて聞いたばかりだ。
サボはといえば同じどんぶりを置いて私の隣に座ると、ニヤリと笑って「共犯だな」と囁く。
あぁ、もうずるい。そんな魅力的な言葉を聞いたら大人しく罪を犯すしかないじゃないか。
のびるぞ、と急かされて両手を合わせる。

「いただきます」

夜中のラーメンは背徳的な味がした。



prev|next

back

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -