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 day by day

死にたいと、そう思ったときに限ってサボは書類を抱えてやってくる。ヘラリと笑って「なにも知りません」という顔をして。

「お前がいてくれて助かった」
「そんなこと言っても手伝った報酬はちゃんともらうからね」
「わかってる」

私を必要としてくれることが嬉しくて、死ねないのが苦しくて、泣きそうになるのをぐっと堪えて書類の山をかき分けていく。ぐちゃぐちゃの心のまま軽口を叩くのにはもう慣れた。

「こんなに溜め込んで、コアラ怒ってたでしょ」
「そうかもな」
「そうかもなって……。はぁ、コアラも大変だ」

とっ散らかった紙の集合体がきっちりと整えられば私の役目はもうおしまい。私の生きる理由も、おしまい。

「今回の礼はなにがいいか?」
「今度でいいよ」

早く帰って、と言外に告げるもサボは出て行く気配はない。それどころかどっかりベッドに腰を据える。本当、察しがいい人。今日は知らないフリはしないみたいだ。

「ねえ、」
「おれはお前に助けられてる」
「……そう」
「お前がいねぇと困る」
「……」
「だから……死ぬなよ」

私だって、好きで死にたい訳じゃない。湧き上がるどろどろとした感情に呑まれて、溺れて、息ができない。苦しい。
助けて、と言おうとして開けた口を閉じる。見えない敵を倒してほしいだなんて、いくら強くてもできるはずがない。それが私の中に巣食うものなら尚更。

「じゃあ……生きる理由をちょうだい」

生きたいと思えるなにか。生きなきゃと思えるなにか。
それさえあればきっと、この闇の中でも行き先を照らす光になってくれるから。

「……生きる理由は自分で見つけるものだろ」

知っていた。サボがそう答えるって。それでもサボに甘えてしまいたかった。助けてとは言えないのに助けてもらおうとした。

「お前がそれを見つけるまで、おれの仕事手伝ってくれよ」

じゃないとコアラが怒りで爆発しちまう、なんてニッと眩しいくらいの笑顔。
ずるい人。そうやって死なせてもくれないだなんて。優秀なサボなら一人でこなせるくせに。人望のあるサボならいくらでも手を貸してくれる人がいるくせに。

「……うんと報酬弾んでよね」
「任せろ」

また今日もこうして一日生き延びる。
それがいいことなのか、悲しいことなのかはきっと、この先の未来でわかる。




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