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 たまには夜ふかしでも

夜が深くなり、眠気に誘われる頃に「ぷるぷるぷる」と電伝虫が着信を伝えてくる。

「はい」
『おれだ』
「おれってどちらのおれですか?」
『恋人のおれです』

何度も繰り返した軽口に笑いながら電伝虫を持ってベランダに出る。夜風が冷たいが眠気覚ましにはちょうどいい。

「今日も元気?」
『あぁ。今日はデカイ魚が釣れて大賑わいだった』
「怪我してない?」
『大丈夫だ。そっちは?』
「こっちも問題ないよ」

私たちの革命が終わって、みんな思い思いの道へ進む中、サボは船上の屋台を始めた。気ままに世界を見て回りたいと、笑っていた。
「帰る場所になってほしい」とサボは言った。革命を成し遂げるまでこの想いを封印して、やっと恋人になれたと思ったらこんな関係で。それでもあの要件人間が長電話をしてくれるだけでも御の字と言えよう。
空を仰ぐ。同じ空を、サボも今見ているのだろうか。

「あ、流れ星」
『どこだ?』
「ふふ。もう消えちゃった」
『なにか願ったのか?』
「うーん、サボに会えますように?」

本当は願う暇もなかったけど、冗談交じりに願望を言うくらい許してほしい。そう言えばサボは黙ってしまって、余計なことを言ってしまったかと唇を噛む。無理なことを言う厄介な彼女になんか、なりたくなかったのに。

「サボ、」
『お、流れ星』
「え、」

立ち上がってもう一度見上げるが流れ星は見えない。肩を落とした瞬間、背後から抱きしめられて続いて香る潮の匂いに首を反らしてその人物を見る。

「サボ!」
「寒そうだな」

あぐらをかいたサボの膝に座らされて、閉じ込められるように包まれ温かい。ぱくぱくと口を開け閉めする私にサボは笑った。

「ちょうどこの近くを通ったし、お前に会いたくて来ちまった」
「私も、私も会いたかった」
「あぁ。──ただいま」
「おかえり」

今夜はうんと話して、同じベッドで思い切り寝過ごしてしまおう。



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