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 ねえねえコアラ!

「今日はコアラとデートに行くの!」
「コアラはおれと作戦会議があるからダメだ!」

コアラの腕に抱きついてべぇ、と舌を出せばサボに人差し指で眉間をぐりぐりされた。地味に痛いんだぞコノヤロウ。

「はいはい、二人とも落ち着いて。作戦会議は明日の夜でしょ? 今日は書類整理終わったら買い物行ってくるけどサボ君も行く?」
「あぁ」
「えー! コアラとのデートを邪魔しないでよ!」
「女同士でなにがデートだ」
「サボだってデートする相手いないくせに。ふん」
「早く書類終わらせないと買い物行く時間なくなるよ」

もう一度サボに舌を出してコアラと一緒に執務室へ向かう。
大体同じチームだからってサボはコアラにひっつき過ぎる。やれ書類の確認だ、やれ作戦会議だ、と私とコアラの時間を邪魔してばかりでため息を飲み込むにも限界だ。
結局買い物にまでサボは着いてきて、その服は似合ってないだとかなんとか言って邪魔してきた。

「コアラ、髪結んで」
「いいよ。ここ座って」
「やったぁ」

早朝のコアラの部屋はサボに邪魔されない唯一の時間だ。ベッドの縁に座ると、コアラが後ろから優しく髪を梳いてくれる。

「今夜には任務に出るから今日はうんとかわいくしておくね」
「コアラがいないとさびしいよ」
「それはサボ君がいなくて、じゃないの?」

ピタリと固まる私に対し、コアラは楽しそうに手を動かす。

「そんなこと、」
「あるでしょ? もう、サボ君と話したいなら普通に話せばいいのに」
「……無理だよ。私なんか、コアラとの接点がなきゃ、仲間の一人でしかない」
「そんなことないって。はい、できた」

トン、と背中を押されて立ち上がる。不安な気持ちの私に対してコアラは笑顔だ。

「……」
「サボ君はこの時間、修練場にいるよ」
「コアラ、」
「気持ち、伝えてみなよ」
「うん。コアラありがとう!」

ドアを開けて修練場へ足を向ける。なんて言おうかぐるぐると終わらない思考を続けていると角を曲がるときに誰かとぶつかりそうになった。

「っと、お前か」

サボを見た瞬間、いつもは仕舞い込んでいた気持ちがあふれてきて止まらない。どきどきとうるさい心臓を必死で押さえつけて、コアラを探すサボの袖を引いた。

「さ、サボ!」



 ★
 


「本当に手がかかるなぁ」

櫛や髪飾りを引き出しに仕舞いながら、上司とついさっきまでベッドにいた彼女のことを思い浮かべる。
コアラを奪い合うことでしかサボと接点を作れなかった彼女と同様に、サボもサボでそうすることでしか彼女に意識してもらえないと思って今日までライバルになっていた。終いには少し肌が見える服を遠ざけることまでしたときにはコアラも苦笑を隠せなかった。

「素直になれば気づけるのにね」

そんな近い未来を想像して、それはそれでさびしいとも思ってしまって。もう少しだけ二人のお姉さんでいたいなぁと思った。



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