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 ブルーラグーンにはほど遠い

「フラれた」

そう吐き出せば隣に座っていたサボが慰めるようにグラスにワインを注いだ。一気に呷ってダンッと机に叩きつける。

「いやまあ? 忙しい上、革命軍なんですなんて言えないしで秘密主義だったからねぇ……そりゃフラれるわ」
「うんうん」
「でもさぁ……それでもいいって言ったの向こうだったのに、やっぱり恋人同士隠し事は良くないよねとか急に言い出すの? はぁー……」

すっ……とサボの片手が挙がるのが可笑しくて、先生になりきって「はい、サボくん!」と指名した。

「ここに何でも話せる相手ならいます」
「そうだね。サボになら任務のことも隠さなくていいね」
「お前一人、守れるくらいには強くなった」

だからさ、と腰を抱き寄せられて顔と顔が近くなる。わー、綺麗な顔。

「おれにしておけよ」

真面目な顔して冗談なんて言うんだなぁ、なんて。ふわふわした頭で思いながら身を委ねた。




「ん……いたっ」

頭が痛い。そういえば昨日たくさん飲んだ気がするから二日酔いかな? あまり覚えてないけど。
とりあえず水を飲もうと体を起こ──せない。お腹にがっちり腕が絡まっている。

「おはよう名前」
「おはようございます……?」

なんで敬語なんだよ、とサボが笑う。サボだ。私のベッドの中にサボがいる。

「…………あれ?」
「ここ、おれの部屋」

なんで私サボの部屋にいるの? 昨日の記憶は途中でぷっつり途切れていて、肝心の部分は思い出せない。
頭を抱えていると扉が強めにノックされる。

「サボ君! 昨日なにしたの? 噂で持ちきりなんだけど!」
「噂じゃなくて事実だ。あとでちゃんと説明するよ」
「あとで問い詰めるから逃げないでよね!」

パタパタと足音が遠ざかっていく。なんとなく聞きたくないけど、聞かないと始まらない。

「ねぇ、噂ってなに?」
「おれたちが付き合ったってことか?」
「オレタチ……?」
「おれと、名前。ちなみに昨日の内にドラゴンさんにも報告してある」
「え、」

酔った勢いとはいえなにしてるんだ私! ドラゴンさんは巻き込んじゃいけない人でしょ!
頭を抱えていると追い討ちをかけるように意地の悪い笑みを浮かべる。

「今更嘘でした、なんて言わないよな?」
「うっ……。二人とも酔ってたんだから事情を話せば……!」
「まあおれは昨日一滴も酒飲んでねェけど」

まだ足掻くか? ハニー、と囁かれてもうどうにもならないことを悟った。




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