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「#年下攻め」のBL小説を読む
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02:安室side




『最近ポアロに凄く可愛い人が通い始めた』と梓さんが嬉しそうに話してくれたのはつい最近の事。見慣れない顔だというからどうやら最近ここに来た女性のようだ。


「いらっしゃいませー!」


梓さんの声と鈴の音で誰かが来店しことがわかった。緩く巻かれた茶髪で、カジュアルな服装をした落ち着いた女性。それが第一印象だった。


「カフェオレでお願いします」


そう梓さんに伝える声はどこか聴き心地の良いトーンで澄んだ声色だった。梓さんと会話を楽しむ彼女をちらりと見やればふんわりと笑うその女性。あぁ、梓さんが言っていたのはこの女性だとなんとなくわかってしまった。しばらくしてお店にコナンくんたちが来店。それと同時に梓さんが彼女から離れる。その間に一人になった彼女に初めて声をかけた。


「こんにちは、おかわりどうですか?

「ありがとうございます、いただきます」


またふわりと笑った。梓さんは可愛いと言っていたけれども可愛い、というよりも“綺麗な女性”という方が自分にとってしっくりきた。やがてまたベルが鳴る。今度来店してきたのはなんだか怪しげな男。何か嫌な予感が…とそう思ってその男を見ていると、その予感は的中した。


「う、動くなッ!!」

「きゃあああっ!!」

「雪乃ちゃん!!」


しまった、と気づくのが遅くなってしまった。案の定あの女性が男に捕まり人質に。なんとかして助けなければ…といい策がないか考えていたその時。その場に似つかわしくないやわらかな声がどこからか漏れた。


「…ダメですよおにーさん?」


彼女はいったい何を考えているというのか。ナイフを突きつけられているにもかかわらずあの冷静な対応…一般人であれば怖気付くのが普通だ。なのにあの対応はなんだというのだ。冷静にポンポンと犯人に言葉を述べる女性。しかしその声色や話し方、仕草は何を目的として行なっているのかすぐに分かった。


「( ……まさかハニートラップ )」


そう、自分もそれをやることがある。それと同じ感覚だ…嫌、しかしどこか違和感がある。まさか…“素”でやっているのか…?

そこからは早かった。小柄でおしとやかに見えていたその女性はあろう事かその男をいとも簡単に投げ飛ばした。決してその柔らかい笑みを崩さず、冷静に言葉を述べる彼女…


「「 ( いったい何者なんだ…この女 ) 」」


恐らくそう思ったのはあのメガネの坊やも一緒だ。どことなく真剣な眼差しで彼女を見据えている。やがて駆けつけてきた刑事が彼女の顔を見るなり突然畏まったように敬礼を示す。そして彼女は最近転勤してきた交通課所属の警察官らしい…驚いた。まさか警察官だったとは…


「迷惑料とこの子たちの分の支払いも併せて、ね?」


そうやってまたあの柔らかい笑みを浮かべる彼女。大目に支払いを済ませてから店を出ようとしたその途中でコナンくんに呼び止められていた。そして彼もまた、探りをかけているのか彼女に盗聴器を付けている。やはり何かがありそうだ。


「( あとで風見にでも調べさせるか )」


白石雪乃…いったい何者なんだ、あの女


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