00:プロローグ
けたたましく鳴り響くサイレンの音。辺りは真っ赤に燃え上がり、まるでそこは火の海であった。爆弾の解除に成功したと思えばそれは一つ、二つ、という問題では無い。いったい犯人はこれほどの爆薬をどこで用意していたというのか。
「住民の安全は確保できました!」
「よし、他に残されている者がいないかと、爆弾が他に無いかもう一度確認を」
「「 了解!! 」」
「高野、私と一緒に犯人の追跡行ける?」
「もとより一緒に行くつもりでしたよッ!」
「頼もしいね。行くよ“相棒”」
本来であれば非番だったはずで、一日中寝ているはずだった。ここ二日間まともに寝てすらいないというのに…。“公安”というのは相変わらず休めたもんじゃ無いな、と呑気に思う。
「!見つけました、あの倉庫の中に!」
「でかした」
さすが見つけるのが早い。相変わらず便利な“目”を持っているよ、この男は。
「止まれ!」
「くッ!」
ガチャリと音が静かな倉庫内で響く。犯人であろう男と向き合うように男女はそれぞれ拳銃を構える。もう逃げ場はない。少しずつ二人は犯人へと近づいた。
「観念するんだなぁ!“本城”!!」
「ッ…!うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「「 !! 」」
奇声をあげたと同時に本城と呼ばれた男は懐に忍ばせた銃を取り出し、一発発砲。しかし震えた手で発砲したため誰にも命中しなかった。そしてそのタイミングを狙い、高野が男の銃を狙い銃声を鳴らした。カランという音を立てて勢い良く吹き飛ばされた銃を横目に、素早く動いたのは女の方だ。
「動くな」
「!!」
「残念だったな。狙いが甘かった」
男の体に乗り上げ額へ銃を押し付ける。もうこれで終わりだ、と言わんばかりに犯人を睨みつけた。
「…お前の犯したテロでどれだけの人が犠牲になったと思う?」
「…ッ公安の女が…、0(ゼロ)の女が出しゃばりやがって…!!」
「ま、そんなお前をしっかり止めることが出来なかった。今回の件は私の力不足でもある。が」
女は静かに銃を下ろす。男を拘束するための手錠を取り出すためだ。背後には高野も構えている、彼にアイコンタクトをしてから彼から手錠を投げ渡された。
「お前にはしっかりと罪を償って貰う」
「ッ」
「日本の警察舐めんな」
日本を守るために、この国を守るために、自分たちはいるのだ。お前みたいな卑劣な人間からこの国を守るために存在する。それが警察……否、公安警察なのだ。
「、く、くくく…」
「「 !! 」」
途端、手錠を持つ手が止まる。目の前の男がニタリと笑ったのだ。
「油断したなァ!!誰が“一丁しか無い”と言ったァ!!」
「!?」
「!雪乃!!!」
「死ねェェェ!!0の女ァァァ!!!」
___バァァァン…!!
視界が真っ赤に染まる中、こめかみが酷く熱く感じる。
そして、やがて視界が真っ暗になった。
あぁ、コレが『死』なんだと初めて感じることができた。
最後の最後に、任務失敗か…
どうせ最後なら、好きなテレビを見て好きなゲームをながら美味しい物たらふく食べておけば良かったなぁ。
なんで公安警察とかになってるんだ自分は。いつ死んでもおかしくないというのにさ。
あぁ、次生まれ変わったら絶対美味しい物食べてから死のう。
あとせめて乙女ゲームして好きなキャラにきゃっきゃしながら死にたい。もう一緒に死んでくれ。そしてゲームソフトと共に埋めてくれ。
そう、後悔しか生まれない感情の中で私は静かに目を閉じた。