女主 | ナノ


▼ すなおの特権

ラフィーナを知る人なら、おそらく誰でも知っていること。
彼女はとてもいじっぱりだ。


「放課後、うちへ遊びに?」
「うん!久しぶりにお姉さんに会いたいの!」


昼休みに暇を持て余しているとアミティに声をかけられた。
なんだかんだ言ってそれなりに仲の良いアミティは姉のナマエをとても気に入っていて、ラフィーナも自慢の姉を褒められるのに悪い気はしない。
なのでアミティが家に遊びに来るのも嫌ではないし、むしろ嬉しい方に入る。
嬉しいのだけれども。


「どうしてアミティさんをわざわざわたくしのお家に呼ばなきゃならないのよ、全く解せませんわ」
「ま〜たそうやってイジワルいうでしょー!」
「う、うるさい!ですわ!どうしても来たいっていうならぷよ勝負で勝ってみなさい!」
「なんでそうなるの!」


好意を無駄に振りまかないのが彼女が理想とするレディのモットーであった。
それに上乗せして少しつんけんしてしまうがそれは年相応なのだ。
それはアミティをはじめとする彼女をよく知る人にとってはもはや当たり前のことなので、誰も咎めないし何も言わない。

唯一似た者同士のクルークは例外で、よく衝突をしてしまうけども。
それでも彼は彼なりにラフィーナのことをわかっているし、ラフィーナだってクルークのことを少しは理解しているつもりだった。
だからこそ、ラフィーナもアミティ達を好きになれるのだ。





やっぱり勝負なんて持ち掛けないで、断っておけばよかった!

やはりというか、案の定。どちらも同じ意味だが、アミティとのぷよ勝負に負けてしまったラフィーナはいたたまれない気持ちに陥ってしまった。目の前ではアミティが姉の膝の上に座って楽しそうに話をしている。
もちろんアミティも姉のことも好きだけれど、アミティはナマエに特別懐いているし、ナマエは誰に対しても優しい態度を変えない。
だから仲が良いのは当然で、それは良いことに違いはないが、ラフィーナとしてはやきもちをやいてしまうのでちょっぴりフクザツであったのだ。

仕方がなかった。
だっていくら大人ぶっていてもラフィーナはまだ子供。大好きなお姉さんを取られて、1人蚊帳の外。なんてそんなのは嫌に決まっている。
この時ばかりはアミティが憎らしく思えてしまう。仕方がなかった。


「どうしたのラフィーナ?ラフィーナも一緒にお話しようよ!」

ラフィーナが話さずに一人でいるのに気づいたアミティが声をかけた。
本当はそうしたいと思っていたラフィーナにとって、アミティのこういうところは間違いなく彼女を嫌いになれない理由なのだけれど、今はやはり恨めしく思える。
なぜなら彼女はいじっぱりだから、まるで自分が寂しいと感じていたことを見透かされたような気がして、「嬉しい」よりも「恥ずかしい」や「みっともない」という気持ちのほうが勝ってしまうのだ。
あぁなんていたたまれない。一緒に話したいけれど断って今すぐこの場から去りたい!


だけどそんなことは全てお見通しで、ラフィーナが寂しがっているなんてことも最初から気づいていただろう、優しい笑みのままこちらを見るナマエの前でそんなことは出来ないのだ。
大好きなナマエ姉さんの存在は、時にずるい。


ラフィーナはなんでもないように「少し考えごとをしていただけですわ」と言って会話に混じった。
ナマエは嬉しそうに笑っていた。

prev / next

[ back to top ]