男主 | ナノ


▼ やっぱりカオは大事なんだね

勉強、運動、魔導、ぷよ。
昔から兄は優秀で年の差はあれどどれだって兄ちゃんの方が上だったし、勝負ごとなんてほぼ全て負けていた。
例外と言っても、勝てたのはジャンケンくらいしか覚えていないのだからひどい話だ。
だけど別におれは兄ちゃんを恨んだりしなかったし、むしろ天才的な才能を持った兄を誇りに思っていた。

14歳のときにいきなり道を反れて闇の魔導師になったのには流石に驚いたが。
天才の思うことなんて凡人のおれにはわからん。
兄に比べればいかにもその辺にいそうな、RPGでいうなら台詞が「ここは××の村だぜ」のみの村人Aくらい、おれは平凡だ。
優れている点といえば兄に似てよくできた顔くらい。
兄ちゃんがイケメンだというのならおれは準イケメンくらいだろうか。
それくらいの自信は持ってもバチは当たらないだろう。

なにはともあれ、この顔に産んでくれた両親に全力で感謝します。


「アルルがナマエのことかっこいいって言ってたよ」
「えっ」

仲の良いドラコといつものようにぷよ勝負したあと、ふいにそんなことを言われた。
三秒は固まった。

なにそれこわい…
じゃなくて!

「え、え。マジで…?」
「なんであたしが嘘つかなきゃならないのさ!」

「アルルが、おれを…?」
「しかもシェゾに比べてかなり常識人だって」

今人生でトップ3に入るくらい幸せかもしれない。
そう考えるとおれの人生どんだけ味気なかったんだと思う、いやでも!
ただ褒められただけじゃなく、「シェゾに比べて」かなり「常識人」だぞ!
兄がヘンタイで有名なおかげでおれまで迷惑を被ることがあるので女性と子供とお年寄りには極めて紳士に努めていた甲斐があった!!


「おれ、初めてシェゾに勝てた気がする…」
「よかったじゃないか!」
「アルルとドラコのおかげだ。ありがとうドラコ」
「お礼はギョウザ10人前でいいよ!」
「それはちょっと無理かな」


幸せだ!


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